締切前ぼくのお尻に火がついてネタを出さんと書斎をただよう
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靴下の穴から覗く親指と目があったまま逸らせずにいる
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透明な箱に入った僕たちの個々の自由は個々の孤独で
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荒れにける庭の紅白梅の香を主人あるじのもとへそよ吹け風よ
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エアコンの効きはいまいちラジオなし代車でアカペラうたう納品
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『島人ぬ宝』を聴けば披露宴ギターで友がうたひし弥生
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付箋して押し花にしたエピソード 形容詞ごとに重ね収納しまひて
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メーカーが徒党を組んで値上げする我も片棒担いでるらし
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春寒も半月経てば落ち着きて予報士知らす蕾の膨らみ
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春遠し 鍋の湯豆腐グツグツと 湯気の向こうに牡丹雪舞う 
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雨垂れと秒針の音はリズミカル 未明の我を眠らせまいとす
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火と水と草とで迷う三つ巴 ぼうけんたちの最初の記憶
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ただの人になった神がつぶやいた「どうかお願いします神様」
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急いでるときに限ってちょうどよく僕のものではなくなる指紋
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「男性を好きになれない」 落胆と同時に安堵した僕がいる
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とり返しのつかない眠り何遍も何遍も繰り返して今日も
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徒歩圏内限られているこの足は歩けなくなるその日が近い
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「愛」ならば 私の辞書の、ほら ここに 君の名前がきらめいている
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祝うべき今日と分かっていながらも もう交わらぬハタチのあなた
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トラブルを無くす歌もてトラベルをわたしはポップアイコンになる
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夕闇と テールランプと 「きぬた歯科」 助手席をみる 勇気はなくて。
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介護っていろんな人に出会うから人見知りもほどけてきたよ
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母の手のしわを数える帰り道あたたかい場所いつもある場所
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片想い実らず終えた恋でした イェーイめっちゃホリディ、返して
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締めパフェのアイスが少し溶けた頃君のまつ毛が好きだと気づく
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川縁かわべりで朽ちた座席が泳ぐ日々流れる水は澄み切っている
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のら猫とアイコンタクトした朝は性善説に一票あげる
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冬コート雪の匂いがまだとれず凍ってた星少し溶けつつ
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三角のチョコパイひとつ分けあえば世界はふたつに生まれかわった
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「愛してる」を何億回重ねても貴方が欲しい「愛」には成れず
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