駆け足で用事済ませて 追悼の思いにふたがれ 愛は勝つのに
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ゴミ出ししか頼んでないんだ いい加減曜日を覚える気はないのかね
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ひとり住む母の背中を見送れば丸く小さくおむすびに似て
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運動会「おいなりさんがよかった」と言わずに食べたよ母のおにぎり
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要らないと一切合切捨てたあといつもと同じわたしが残る
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冷たい雨 芯まで冷えそな こんな日は キャベツスープであったまろうか
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「来週末帰る」のLINEで 心持ちぱっと華やぐ夫婦ふたりの食卓
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天からの落とし物、雨、「ポツ」「カン」と 無音の滴楽器に変わる
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一人にはもう慣れたのに 大人にはなれないまま
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越えていく 雲も見えざる 万葉の 風に雪崩なだれる 紅葉もみぢの峠
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パッキンがヘタって垂れる水道と雨音繁し今はウェット
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洗面所はときどき上階うえの匂いして 焦げ臭い時 心配になる
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きときとの バスは満員 坂道を 右にひだりに ゆれて頂上 / 除幕式
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ミントンの和紅茶なんて大好きだ いま和紅茶が流行りとみえる
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肌を刺す 冷たい風の 伝言は 気を引き締めて くじけるなよと
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汗拭きのタオルハンカチ それほどは使わなくなり 有難き季節
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失敗とされるベタ付くクリームを欲する者おり滑る指を持ち
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久々に君に出会えたこんなにも切符小さく手のなか休む
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ラブホテル。コンクリガラが山積みで育まれた愛解体される
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幾年いくとせも京都住まいにあこがれた母は今まだこの町にいる
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切符買い改札に浮かぶ「ありがとうございました」の文字にほっこり
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夜明けまで続く雨音下ろされたとばりとなりて黄泉に眠りぬ
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不意打ちで 口づけ奪った罪と罰 一生かけて償いませう   
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殻を割った向こうには青空がある そう信じた雛はいま、
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丹精におまえが息をこめたならその異形すらおまえのことば
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子供部屋シーツで仕切り秘密基地 幼い息子キミら目輝かせ遊ぶ
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秋深し このくうなる心にはカラスが鳴くもいとおしく聴く
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「なんか飲む?」その1言で1日の疲れも吹き飛ぶ ・・・なんて言えない
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ききかえす ことばは礼と こたえられ 離れたならば きこえやせぬと。
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あめふって つきもないのに 近隣の 家しるえっと みょうにくっきり
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