「何か音鳴っているね」と三歳は初めて気づく蝉の鳴き声
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体力は水溶性であるらしい汗にプールに削り取られて
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初セミの声を聞くまでセミの声忘れていたような気がしたんだ
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早くしろ時間がないぞ遅れるぞ幼子までも生き急ぐ現代いま
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ヤニ吸って丼かき込む間にも、同期達は仲良くランチ
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快適さ求めたつけか猛暑日は人影のない午後の公園
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別れさえ等間隔に並べられた人間性の感動ポルノ
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窓拭きは見て見ぬふりのツケ払い よりにも寄ってこの真夏日に
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虫除けの有加利ユーカリかげば遠き日の公園に鳴く蝉のがする
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溢れてく尽きせぬ疲れただ僕はお腹が空いたお腹が空いた
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まどかなる真っ昼間のみに刻々と符号は襟に咲き登らせる
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初蝉せみ鳴きて「あゝ夏が来た」どころじゃない猛暑乗り越え生きようぞ とか
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平日のたった四日がしんどいよ暗がりの隅で壁に凭れる
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天上の小娘たちは羽をがれ湿った地下牢そのめい果つる
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継続けいぞくが ちからになると 知りつつも 続けることが 何よりがた
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プロならばひと夏持つかなショートヘア耐えてひと月承知のセルフ
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寝ぼけたか ちま猫 飛び起きニャーニャーニャー はいはい どんな夢見ていたの?
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ねこたちは お気に入りの場所 スヤスヤと 母ももうすこし朝寝がしたい
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治りかけの傷跡 いまさら痛痒い こころのキズも おんなじかしら
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やけくそで決断すると気がつけばいつもなぜだか茨の道で
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手を振って 友と別れる 歓楽街 子供の頃と 違う寂しさ
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心の音 はざむ空虚に 鳴く鹿の 震える札も 靡くタラレバ
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風呂上り両手をあげてつかまつてもう動けないエアコンの下
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朝焼けに闘う君の歌をきく内に染み入る中島みゆき
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兄ちゃんのあのブルドーザーが欲しいんだ! ヨチヨチ歩きはあともう一歩
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ヒトだけが持つと言われる感情を味わいたいとき捨てちゃいたいとき
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芋虫を 潰して安堵の 大男 鳴かず飛ばずの 恐ろしきは如何
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空と海を朱に染めるほど苦悶の陽あの苦しみを綺麗といいしは?
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誇りだけ掠め取っていくような山賊を身に纏う冷笑主義者
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視る者と視られる者の交錯を 覗きて記す箱男の壁
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