年取らば 都会を離れ のんびりと ここは山梨 信玄眠る
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この場所に 足りないものは 海一つ ここは山梨 信玄眠る
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ホーホケキョ 明日は祭日 花見かな ここは山梨 信玄眠る
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ホーホケキョ 久々聞いた 懐かしき 幼馴染か 鶯の声
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夕映えが霞んでみえる 国道のジーンズメガネはその場で修理
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死に場所は どこでもいいが このままじゃ ここは山梨 信玄眠る
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チクチクと背中に刺さる冬肌着 十七時でも夕暮れはまだ
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年度末ぶっきらぼうな倅食うはなむけのカツ蕎麦啜る父
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兵庫県 生まれ故郷に 偉人なし ここは山梨 信玄眠る
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帰り道 畑に寄って 水をやる ここは山梨 信玄眠る
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茜雲 萌え萌えしてる 夕暮れは ここは山梨 信玄眠る
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阿部寛 松潤ビビる 夜八時 ここは山梨 信玄眠る
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ホーホケキョ 富士の高嶺に 陽が残る ここは山梨 信玄眠る
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ソワソワとしちゃう春の夜きみだってどこかの街でぼくと同じく
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初瀬山尾上の桜咲きそめて麓の里に匂ふ鐘の音
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日の本を桜の国となさむとは神代に誰か契りおきけむ
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肩や背に桜のはなびら載せられて知らずに春の運び屋になる
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見て過ぎるひとを百年前の絵の老人はただ風として見る
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スーパーで偶然見つけた花一つ母に贈るよストックの花
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僕にしか出来ない仕事があればいい まだこの世にはないお仕事で
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真っ白な紙のページの隅っこに君のイニシャル書いておく春
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本当に あたし見たのよ ウシガエル 涙をつーんて 流していたの
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苦労して 来たばかりの あたしだけど あの子よりは いい歌詠める
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飼ひ犬は餌食ふ事と寝る事のほか興味なし吾は及ばず
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閨近き梅に木伝こづたふ鴬の声より白む春の曙
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その頬の 流るる涙に 散る桜 彩り添える 惜別の日に
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わかってる わたしが生まれて きた意味は あの夏あなたに めぐり逢うため
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貼り紙の多い店内やっぱりね 人生語る蕎麦屋のトイレ
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小さくて ほんとに綺麗な あまつぶを 生まれて初めて 壊してしまった
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ああ水が ちゃぽちゃぽ いっているね 海で死んだ あの子の声だね
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