「ねえ元気?」「めっちゃ元気」「噓!」スプーンで掬ってくれるようだ優しき
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香水も 引く紅も全て 自分のため 貴方だけで 染まるわけじゃない
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熱い熱 溢れる吐息 その瞳 私だけとは 言えなくて
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手も入れずほったらかしの庭藪の樹の下陰に著莪シャガの輝き
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検索の履歴が美しくなってゆく新しい歌集を読めば
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恋をした あの日の私を 破壊した 知らない女に 微笑む表情
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ストゼロに ストロー挿して モルヒネを 切り傷だらけの 腕にも刺して
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花束💐のスタンプ送り「ありがとう🙏」 「グッジョブ👍」返す母に敵わず😊
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水商売 辞めても残る 偽りの 資本のキスと シャブの幻覚
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わたしたち おんなじ気持ち だったのね きみの名前は 今日の季語になる
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死にたいと 咽ぶ私に 溜め息を メンソール混じりの 捨て台詞とか
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まだ寒い 夜風に揺れる 七分袖 リスカの痕を 見て欲しいから
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ひと息にさくらを散らす強き風きっと春への終止符なんだ
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月命日 あなたのいない 六畳間ワンルーム 冷蔵庫には あの日のビール
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サルビアの蜜の味だった内緒話 今でも口でころがしている
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耳から垂らす金属と血液がおなじ温度で肉叢を焼く
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幸せに なってねなんて 言えなくて わたしのためにと 付け足してみた
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不安なり日頃家事などせぬ息子焼肉奉行を引き受けると言う
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水張田みはりだに整列し居るさき苗 雲越しの陽がやわく温める
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いつまでも 続く苦しみ いつの日か 雨雲晴れる 奇跡願って
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冬がきらい 雨がきらいで 夜がきらい ずっと晴れてて あたたかくあれ
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買っただけオブジェと化した本たちの視線うるさく耳を塞いだ
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あたためた 牛乳でチョコを ゆっくりと 溶かすように 忘れていきたい
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やるせなさ 丁寧に畳み 奥にしまう 次の季節に 取り出すように
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すれ違う男の子に言われたよ 「坊主あたまカッコいい」って(本当ですからっ)
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さっきからこっちを見てるフランス人何か言いたげすっごく気まずい
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いや全部 オートバイでしょ? またアウト ロボットですか はいそうですか
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君は御菓子 甘いモノが好き 僕は唐辛子 辛いモノが好き 双子本体は胸が痛い
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クレパスの緑を全部使っても捕まえられぬ春の脈動
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普段ない とりとめのない話すら 交わす関係 心地よき距離
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