真夜中に ふと目覚めては 寂しさの 風吹き抜ける 心持て余す
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宵帳茅蜩かなかなと鳴く樹々を背に泣けない虫を愛しく思う
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この残暑に「煮物がしたい」と母が言ふ 「熱中症」と単語で返す
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疫病に蝕まれし日通り過ぎ社会復帰!とシーツを洗う
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2割引きの菓子パンで朝をはじめたる 味は割引になってないから
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言えぬこと言い足りないこと胃に収め大和撫子のふりをしてみる
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ソーダ水 氷の隙間泡の影 みどりに浮かぶ白い夏雲
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750ナナハンで 八月の砂 駆け抜けし友 入道雲立つ バイクに散った夏
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七夕のかへる衣に風吹けばいとどうらみやたち増さるらむ
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七夕の別れの涙落ち添ひて露置き増さる軒の梶の葉
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渋滞の車窓の子とふと目が合えば 互い手を振る アア、繋ガッタ
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カーナビの知らない道をカーナビはライ麦畑走ってる気で
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流れさる 景色ばかりを 見ていたから 星がこんなに 増えてたなんて
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もすがら らえぬに短夜みぢかよは うちつけなりて明けしらみゆく
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ビアボールなかなか奥がふかきもの 日本酒もワインも のんあるがあるのね
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「様」付けで呼びたいキャラはオスカル様 年齢としがバレるな ベルばら世代
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カシャカシャといふ音なにかと思ったら ねこがねこストラップを弄び
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まえよりも うたがへたっぴ エモたらず ふまんながらも しあわせなのか
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あの夏は うだる暑さに 疲弊して 君の声さえ 溶けて消えゆく
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新学期 姿を見れば 夏休み 思い出光る 顔が並んだ
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新学期 小麦に染まる 友見つけ 白い自分の姿を恥じる
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迫り来る 時間見つめて 止まる手に 母の怒声で 現実戻る
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夏休み最終日には大慌て 駆け込み乗車 老け込む夜に
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階下降り 籐ラグ涼しや 虫のこえ 音痴が一匹いちひき 耳も耄碌もうろく
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室外機運転音を良く聞けば上手く混じってケラの鳴く声
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四弦が轟音絡むステージに激情撒きて躍りだす四肢
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気づいてる? 上手くいくのは初めから想いあってる2人だけだよ
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「予後は半年」教科書の通り逝く 最期まで真面目な母でした
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弱りたる金魚を最期は我が家でと三百円で持ち帰る夜
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彼の人の 奏でるこえは粒々と 天より注ぐ流星の如く
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