コロナ後に味覚嗅覚失いて味付け苦慮する晩暮の炊事場
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去る人も来る人もいてやじろべえ傾く時をまた見逃した
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安心にあらずと詠んだ貴女までココアの甘い湯気飛ばせたら
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子猫から 二匹兄弟 十余年 今も欠かさず 家パトロール
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この不安誰かもらってくださいな 今夜零時にお待ちしてます
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不安持ち毎日必ず仕事行く 動くと不思議不安は消える
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クレジット心当たりのありすぎる数字の並びに頭を抱え
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「なんだかなぁ」 呟く君の苦笑い 私が笑えば 糸が踊った
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軟骨の 延長線に目を引かれ 見慣れぬアールに 締まる喉元
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一日の最後にココアをゆっくりと飲めば嫌なやな事さえ胃の中に
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バスの旅日頃の憂さを語り合う正解なんてあるはずもなく
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速報に大雨警報ピロピロと遠雷の音はその辺りより
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お香が趣味の男は碌なものじゃない 香り残して出ていきやがる
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画材屋は変わらずあったガーネット溶かしたような夕暮れの街
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さみしさの居場所とおもう雨だれの音がやさしく溜まる窓辺は
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あなたの焼く薄焼きパンに穴をひとつ。 いいえ。 これは縮み防止。
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いいかもよ。 泣きたきゃ泣けば いいのかも。 大丈夫 きっとよく眠れる。
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抜けていて 柔和なあの娘が好きだった  空冷四気筒が鳴く 夜
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冷めてると言わせておいて構わない 胸の燠火は粛々と燃ゆ
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ガラス戸に 家守ヤモリの腹の映る夏 羽虫はむしを糧に 大きく育つ
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半袖の 君が「こっちにおいでよ!」と はしゃいで 秋に行きたくないよ
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神様はいないんだけど運はある。ずぶ濡れだけは避けられたから
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小雨でもずんずん歩く若い君合羽自転車の横追い越され
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文具屋の腰の高さの試し書き「ママだいすき」と幸せの跡
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このクール見てたドラマは15本 TVer使って倍速だけどね
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平穏な毎日送り幸せと 分かっているけど淋しさおぼ
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約束はしないでいつも「じゃ、またね」 いつでも会えると信じてたから
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何でもないように定石を放るその心臓に穴を開けたい
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俺がどんなに苦しむかなんてこと君にはどうでもよかったんだろ?
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新宿の路を這う這う Gの虫 行く身のこなしの滑らかさよ
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