ベランダで さめざめと泣くバスタオル 私より夫を恨んでくれ
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同窓会の名簿に載らなかった異物 あの日閉じ込めた怪物はまだ
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暮れてゆく 光と闇の 境目が 生と死との 藍を深めむ
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紀伊國屋レジが混んでるどうしよう違うお店に場所を移すか
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312ページ目の空白に物語との別れを惜しみ
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からすみを喰らふ 夥しき夢を 我が暴力の尽くることなし
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透き通る 声に呼ばれて 空見れば この世界には 鷹と私だけ
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あなただけ愛されたいの可哀想私の中の恋する私
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眠すぎて行きたくないなと思う朝 するーっと小学二年に戻る
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「セコムより俺にまかせろ」倉庫前小さく笑うニホンカナヘビ
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刈り取った麦の畠で朝食を鳩は降り立つ二毛作前
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献血🩸も3桁になりと、慣れたもんだが、成分は長過ぎかな
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少量の愛をください私にも幸せにする覚悟はあるの
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冷たくて細くやさしい明るさの春の感じの雨になりたい
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植物の間引き作業に思われる間引き作業の間引かれる側
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いつかみた夢のきれいな出来事の正夢になる日をすがる毎日
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ベランダに溜まった雨の様相にこのまま世界と隔離されたい
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人が住む地域でないとされている場所にも人いてすべてやりすぎ
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暗闇のへやではじめて気付く夜思っているより外は明るい
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宝くじ億万長者夢みては儚く散ってまた買って
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YouTube見ては体操するものの長続きしないいつもの私
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ボブ好きの あいつのために 長い髪 切った あんたは 俺を泣かせる
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飴細工壊れぬように舐めている妹の舌綻んでいる
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こども園のプランターに生るトマトへと外から念じる おいしくなあれ!
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おフランス気取った肉を食みたれど旨さわからぬ舌よ見栄張れ/醤油味の方が好き
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商店街 笹の飾り付け始まりて すこし華やぐ じきに七夕
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仕事もお金もただの肩書きと紙に成り下がる終末を待つ
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飛び跳ねる姉をじいっと見る一歳 見よう見まねで小さく屈伸
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魔法など無い証明に君が描く騙し絵そっとなぞる、撫でる、ね。
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思ひでむ人もやあらむわが袖を花橘の香にし沁めてば
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