うっすらと路面に積もる雪が溶けその上にまた降り積もりたり
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知りたくもなかったそんなの今頃に恋愛感情なかったなんて
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動かない ストーブのそば はなれずに 右側だけが ホカホカの猫
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この季節食べたい魚は鰤か河豚ひとまず割烹にでもいそいそ
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後悔か恨みか未だ十八の進学の道閉ざされた事
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噛み切れぬ想いはだんだんずっしりと背中に回りて重さ増したり
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恋歌をつづってばかりの短歌見て紫式部の姿を想う
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あり得ない話しは聞きたくないなどとなぜ言い放つぼくの気持ちに
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いい加減疲れるのよねこの仕事そういう君に冷や酒を注ぐ
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ひかる人 八木重吉の詩のような真っ直ぐなきみの言葉眩しい
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いつの日かあなたと出逢う 僕たちがいない庭では子犬が走る
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星になどならない人を標にし 迷うことすら幸福だった
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未来とか床にちらばるゴミだとか 見ないふりして等閑に付す
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博多駅平日なのに人集り人の流れに飲み込まれそう
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次会う日きみは笑ってくれるかな 手首に当てたカミソリを置く
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触ったらヒヤリと冷たく突き放す午前六時の冬のステンレス
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ムビラ弾く東洋女性の国籍が名に᙭の綴りで導く
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吸うと浮き吐いたら沈むこと何度確認したら気が済む湯船
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植物が枯れたら猫が死ぬよりも悲しくないか頭をよぎる
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髪を切る行為で私なんかでも生きてることを肯定できる
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いくつもの言葉が頭を散らばって収拾つかず今日も眠たい
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生物が惑星よりもいるという地球ほしでうじうじ悩んでる
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神様を呼ぶにはかなりちっぽけな悩みだからさ聞いておくれよ
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左手の傷を目にして右利きと思う私もあなたも普通
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コンビニのあつあつ肉まん 缶コーヒー 暖かき冬を堪能している
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提出の自信作なる手習いは講師の チェックを次々と受け
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鮮やかな靴下を履く うつむいてしまった時の励ましとして
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白々ときみの魚が正視させぼくをきよめるフランス組曲
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豚汁と、だし巻き卵と、おにぎりと そういうもので救われるはず
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もうとうにぼくのリズムをずれているブルグミュラーのメトロノームよ
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