いい夢を見てスッキリと目覚めたい なかなかそうもゆかぬのであり
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三年みとせぶり旅立ちの朝巡りきて空晴れ渡る 孫ふたり分
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バリバリと鳴き出すラジオは先触れの少し遅れて盛大な雷雨
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音立ててカエル飛び込む池端に宗匠頭巾の人影を見た
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薄く伸ばしたバターの香りの原石をルースにしていく型抜き
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哀しみと 怒り交互に打ち寄せる うるさい、黙れ 独りにしてくれ
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テーブルを転げた箸はそうだよな隅の埃を纏い横たう
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この道を 涙あとつけ 歩いてた 今懐かしく 春はうららか
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久し振り 辛い顔した 息子見て もっと気楽に 生きてもいいぞ
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阿保になれ 善良にして 明朗で 快活にして 親切な阿保
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桜月いっきに変わる日常を想像したり壊してみたり
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そうなんだ 神経質な 人たちが 世界を暗く 陰鬱にする
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ピリピリと 真面目な人が いるときは 私は逃げる 見えないように
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春風に散る花びらを追い そっと受けとめる 優しい貴女の手
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転がった サッカーボールを 蹴り返す ただそれだけで 怒られました
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暴力の 中で育った 少年は ひどい言葉も 甘い甘いと
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死にたいと ポツリ呟く 少年の 悲しい目には 灰色世界
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秘匿の園に客人が来たときの魔法 笑顔で「いつかお話しましょう」
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真夜中にいかづちとどろき起こされて稲妻走り真昼の如し
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死に場所に船を選んだ人おもう 最期にうつる海の青さよ
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雷鳴と 共に激しい 雨が降る 春本番が 突然来たあ
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稲光 轟く音に 何事や 原子爆弾 これは春雷
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パンと珈琲の香りが誘う猫の道ハイソな彼の秘密の隠れ家
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テニスボールはっきゅうを追いかけすごす中学の師と肩を組む卒業の空
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夢枕 愛しの君は薄情でわたしはやっと忘れられそうよ
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きみたちはなないろの種 列を成し未来をつめたランドセルがゆく
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朝のたび生まれ変われるとするならばわたしは今日は草木の香りに
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通過儀礼 そんなものはなくたって 認めてあげなよ 不肖の友なら
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土手の橋 対岸から行く君の方 イルミ観ながら飲んだチューハイ
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日暮れまで 土手でアカペラ君の歌 渇れた涙が溢れてきたよ
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