どけどけと迫りくるクロ煩わし道を譲りぬお先にどうぞ
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かの君の 電話を待ちて 恐れたり はじめの言葉 せめて優しく
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不意打ちの春の息吹に耐えかねて右手に託した厚手のコート
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トンネルの中が外より涼しくてふと立ち寄った春の気配だ
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抽象の最果てに住む怪物を叩き起こしてしまった僕ら
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気が重く下向き歩けばおしゃべりな春の花々吾を励まし
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「こっちおいで」あなたの腕の中で踊る浮かれた足取りはじめてスウィング
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引き際を桜に重ね馬場あき子「百人一首」をもいちど学ぶ
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知らぬ間に動きが鈍くなったらし一時間すらやたら短い
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押し強く誠心誠意の男よりイケメン君に軍配上がる(相撲由来語⑨)
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海行かば水漬く屍は土左衛門 ぽっちゃり色白お腹まんまる(相撲由来語⑧)
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わかどき 覚悟かくごめしも かなしけれ 永遠とわきれよ 心中こころうち
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さき手を するりと抜けて 風船は 春風にさらわれ 空を舞い
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ごめんねと 云って赦しを得るもなく この苦しみを死ぬまで背負う
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休み明け急に大人びたえみちゃんの肩になんかのつぼみがついてる
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3年間 地獄歩いた君の道 遅れて今は 俺が後追う
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チューリップ 土の下にぞ たへしのび 春ふたたびの 咲くやこの花
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ホットチョコレートホットチョコ 飲みそびれたまま春が来て 今日明日初夏の気温だ どうしよ
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2年間 生きながらえて最大の 「トラウマ・・・・」に遇う また地獄逝き
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よし誰も見ていないからドーナツを素手で取っちゃえを見てるわたし
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我が親友ともが かけがえのない我が親友ともが 癌と知りては沈む日続く
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春風を臀部に浴びて削れてゆくだけさと笑うブロンズ像
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車にて谷間たにあいの路を走り行くはく木蓮の街路樹つづく
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売ってない無くしたならばどれほどに当惑するか愛用の匙
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「赤ちゃんか!」口では言いつつ待っている 抱っこをせがむ君の一言
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命日に記憶は巡る幼き日父が削った鉛筆並べ
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口癖の「あのねあのね」が可愛くて こっそり押した録音ボタン
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突き破るコンクリートの隙間から緑鮮やかしばし足とめ
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ねこだって おくち「いー」になる ときもある がみえている たいそうかわいい
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ハミガキで お口「いー」する ついでにね 鏡に向かって 笑顔の練習
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