水中に深く潜れば音は無くしかし浮力が上へいざな
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隣でさ目がくらむほど魅せてくれ終幕までの君の生きざま
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30年前イチロー来たる地元球場まさかあなたも観ていたなんて
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守秘義務が吾の心を悩ませる王の耳見た床屋の気分よ
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八つ当たり 自己嫌悪に苛まれ また繰り返す 愚かな人間
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きっともう大丈夫だよほんとだよ 全てがうまく行く気がするんだ
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おねむなの おててをそっと そえている おひざのうえの ちま猫ちゃんよ
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幸福なクラス級友絆ありあれが最後の冬物語
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凍て風に吹かれて歩くきみの頬 とき色に染まる山茶花のよう
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丸四角丸に四角は合わないと強くなれよと四角に言いて
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哀しみのレンズ通して不可思議な光を放つ羞じらいの人
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日が暮れて雨戸を閉めるとき気付くサッシの外には真冬が来ていた
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粗大ゴミ置き場置かれた姿見に映る私に見覚えは無く
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冬枯れのバスを降り来てちりぢりに向かう先あり無き人もおり
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柚子仕事かりん仕事に金柑も果実実る家幸いなれ
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何事や めずらしい父 からライン 散歩の写真 はなんでやねん
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水槽の四十五センチ幅ほどの宇宙そらを語るや金魚が二匹
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オーベイベ連発する語彙力の ああ語彙力かな
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むきだしの棘に触れても血は出ないこれは夢ですぜんぶ夢です
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悲しいほど冷たく冴える月のをオレンジの街灯がほのり暖め
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凍てついた優しみたれも放置して黒のドレスの時限装置に
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たわむれに閉じた世界を切り裂いてひかり賜わす白銀の鋏
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リビングの隅に取り残された夏ものぐさな我に首振りもせず
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六年の 歳月長し 終盤の 急登する吾子 静かに祈る
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ぶっ放す弾道弾よ飛んで行け千里の彼方空の果てまで
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死にきれず君を抱えて雨の中世界にふたり君を埋めた
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死に夕ヒが含まれているから夕陽を見て死にたくなるんだろう
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死にたいし 死にたくないし 詩に対し  死にたくなく泣く 泣く泣くないし
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素直さを 子供らしいと 嫌がって 屁理屈こねる 子供心に
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お疲れと 年を重ねた目まわりに アイクリームをたっぷりと塗る
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