辛いことあつたら母に云つた子の「つらい」は宙に漂つてをり
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十字架のごとく我らにのしかかる人づてに聞く今の症状
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午前二時倒れた妻のママ友は妻とランチでチョコミント喰ひ
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平凡な五人家族のしあわせを瓦解させうる血栓一つ
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母ゐなく子は眠れたか妻の友脳梗塞の土砂ぶりの朝
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彼のこと引きずる君は見たくない 俺じゃだめかと言えたらいいのに
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長袖にぬくき茶を持ち雨の中今夜の豆腐あんかけにしよう
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嬉々として 雨どいの水 傘に受け 道のり遠し 雨降りの朝
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どうやって電子レンジと冷蔵庫無くて暮らしていたかと思う
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理由など何もないただ今日は気が向かないそれだけと猫が言う
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石鹸を小さな手ごと泡立てる 粘土クレヨン泥にスライム
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雨予報はずれ降るに鳴く鳥と皐月終はりの朝風惜しむ
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我が家の玄関に巣を作り初むツバメのありて思案にくるる
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鶯の声を聞く朝曇天の空に轟音ヘリコプターの
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筋通す 自己満足のお節介 嫌われようが、子らのためなら
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正義ヒーローに成るつもりなどもうとうない 俺のせいぎを貫くだけよ
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朝凪に 鳥らの声しか 聞こえない 世界にただ 一人の私
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やさしくて人間嫌いのかみさまは人魚に足を与えてうばう
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大好きな あの町に行く その度に また好きになる 心は不思議
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使われた後の食器は醜いと思う私は何に使われたのか
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梅雨前の天ひさかたの笑み見せて 浮かれし風の薫り過ぎゆく
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はかなくも枯れゆく躑躅ツツジ 労いの眼差し送る 「また来年」と
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母への愛 溢れてベッドの端なれば 気をつけ姿勢に 腕や足乗せ
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五月末まさかの氷雨におどろいて ぼらがぴょんと跳ぶなり
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「勝手に来てお茶飲んでるのぬらりひょん?」「いいえ隣のボケ爺さんです」
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女房に「私は女中?」と問われたら 「私は下男?」と問い返してやろう
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夏前を忘れぬための一呼吸 あの世みたいに美しい朝
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記念日に 渡せる時を 願いつつ 2ヶ月遅れの 桃の紅茶
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病にてつぼみのままに枯れるなか童の顔の泰山木咲く
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来る夏の 明るい時間 灯台に 今は嵐の 波を渡ろう
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