庭面にわもにも 晩霜おそじも降りし 春の朝 土踏む音に 耳立てる猫
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陽だまりにアンモナイトの型で寝るネコの真中まなかにわが面埋もうずめり
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朝未だき落ちる瞼に隠されて世界は闇に逆戻りする
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十数年 誰もれずに 錆び付いて 音の狂ったピアノは隅に
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週明けに新しき職場で履く靴を準備する今日は子供の日なり
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二十円引きクーポンプラス値引きシール=百円切ったおにぎり出来た
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納品は毎日つづく裏腹の大小二つ口内炎でき
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子とすごす当たり前こそ有り難くもう死語となる「家族サービス」
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兄たちが食べると云つた昼食に悩んで合わす同じ回転ずしチェーン
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意に沿わぬ巡る順番提示せばチョコバナナ買う取引ディールをだされ
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忖度をしないと決めた下の子はグルリの森に三度も入り
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同じよな家族のあとをついてゆくこの坂の上門があるらし
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出遅れて駐車場なく回された臨時は遠くたどり着けるか
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兄映画妻付き添いの子どもの日弟とゆく桐生公園
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舞ふやうな白を支ふる紫の花びらひらひら庭の菖蒲あやめ
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振り返り振り返りして帰る道あの人がいつまで見送ってくれるのか
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わさび田の近く湧く水飲めるらし地中の清冷ボトルに満たす
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ここにいるみんな生きて電車に乗れて 普通にすごい。
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みたくないものが日に日に増えていくたとえば君の薬指とか
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ピーナッツバターを直接舐めるようなそんな雑さで死ぬまで生きる
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朝ぼらけ無意味に命を削っては夢に夢見て夢見る夜明け
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早苗田の 黄金こんじき色の水鏡 朝日を浴びてツバクラメ飛ぶ 
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初夏の茄子 煮浸しにして 薬味乗せ 届けし友の 愛情も乗せ
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村上へ藻塩を買いに彼と行くモナカどら焼き大人の遠足
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地獄には なにがあるかわかりませんね  あなたは いない でしょうけど
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三代目ぽちは 初代のぽちよりも 飯をよく食べよく遊ぶ
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不要不急 それこそだいじだったこと もうね、不要にでかけていいよ
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帰宅せば みかんの花は ほぼ散りて 気持ちはまるで 浦島太郎
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本当は 言わなきゃいけない事もっと あるはずなのに ありがとうだけ
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天井と年収の壁壊そうと女たちはフェミに武装す
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