暮れてゆく 明日に急げと 言うように 今を踏みしめ 焦らず行こう
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スマホから誕生祝う孫の声歳を聞かれて五つサバ読む
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ひとしづくおちた涙は何のためいまぞ生いたつこの芽のために
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すみません、こんな(遺棄されさっきまでカビまみれだった)皿しかなくて
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教えてよ、どこで計算ミスしたか 「ごめんね」とだけ答えたきみへ
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屋根裏の隙間から見る 悍ましく必死なほどの消えない火種
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露天風呂 湯面ゆのおも映る 新緑と 抜けたる空に 異次元見たり
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春雨に僕がなくした青い傘知らぬだれかを守れたろうか
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来年も会う約束だモンシロチョウ マイナカードを翼にのせて
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コーナンのレジにて 少女が 一輪の花持ち並ぶ とおにはならぬかな(お母さんにあげるのね。可愛いなあ)
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アサガオが今年の夏も咲くだろう声をかけよう「今年もよろしく」
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「だいじょうぶ、これは切れないナイフなの」それがいちばんこわいと思う
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イヤイヤ期のおわりに自ら手放した夢がアートになってじっと睨んでる
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通り雨静まりかえるこの部屋で夏くる覚悟決めたる如し
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ぴかぴかのおうちの屋根に予定調和の夕方がのっている
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紅茶飲む君が小鳥に似てるとき僕は真青な空になりたい
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桜散りマスクを外し夏空を恋う僕がゆく風花のみち
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息をつく間も無い毎日いつの間に季節進みて山菜並ぶ
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万博を出れば夕焼け包まれて今なら君に言える言葉が
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満月に水の張りたる田圃みち月影と共に我が家へ辿たど
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信号を待つ間に脇道ふと見れば疲れ目癒すヤマブキの花
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鳥海山とりみやま秋に伐りたる粗朶ぞだあまた吹雪の山路馬橇ばそりで運ぶ
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母つくる田楽 でんがく焼の木の芽とる 山椒のかおり指に残れり
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妻つくる昼のラ‐ メン添え物の庭で摘みたる三つ葉が香る
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触れる手にいつもの熱がなかったの君の虚しい指が震える
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どら焼きは贈ったけれど 当日母の日に モスかミスドでもLINEギフトで
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アイスの日に母とアイスの話して 話だけして食べそびれたり
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母の日に花より団子の化粧水 若くなれよと白寿の母に
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雨音は止み 戸を開けて 一呼吸 雨の残り香吸いて 散策
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花びらは アスファルトにさえ 解けてゆく 桜という名の かたちを借りて
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