病院に 二人で出かけ 久々の デートみたいや ありえん話
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火曜日は 緑内障の 外来日 爺婆の 夢の競演
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真実を 食らいて骨や 肉となり 夢を食らいて 亡霊となる
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夢を見る また目が覚めて 繰り返し 死んで行くまで また繰り返し
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甘い夢 消えてなくなり また元の 苦き現実 吹きすさぶ風
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少年の聖歌とともに流したい娑婆の漂流いざさようなら
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スーパーの見切り品棚チェックして面白き材さがすは楽し
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見切り棚からみ大根百円で ぬかに漬けたらからみ凄まり
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冷蔵庫半年ついに手付かずの 冷やし中華が気になっている
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目を開き枕元には体温計 そこにいるべき君は今どこ
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思考、感情、「私」らしさを詰め込んで でも全部消してただ箱になる
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春や来い、眠気誘いし冬晴れの今日は旧暦大晦日にて
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我こそが主人公だと生きてきた だからかエンドロールが短い
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誰もいない荒野に咲いた一輪の花が全長九〇メートル
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ぶつかって悔しくって滲む視界でもそうやって私強くなる
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ポトフだけど 豆腐入れちゃろ 和風だし 温奴なぞを食べたい気分
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風寒く 遠いの夏 彼の娘 消えず沈まず 彷徨う記憶
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恋人の家のベランダにもみじが一枚 洗濯物を畳む
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気が急いて仕損じ修正繰り返すタイパは乱れさらに気は急く
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かーてんにくるまり ちま猫 ねんねする さむくなってきた おみみがひえちゃう
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孫からの初めて手紙届きおり葉書を買いに冬晴れを行く
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冬枯れの 色無き季節に ほころんで ごむ 蝋梅ロウバイの花
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暗号の様な字で書く紹介状 受け取る医者は解読めるんだろうか…
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寂寞に地平線までおほはれてサナトリウムのくれてゆく夏
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憂鬱と爽やかな日の繰り返しこれが普通の暮らしのリズム
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繰返す 韋編三絶 道を征く 挑み結ぶは 或る日の想い
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かさならぬ音に気づいて石畳なきみちこそが子らの遊び場
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縁側にパンク・ロッカーたちさわぐような秋さえ遠ざかる夜
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吾に声 掛けし笑顔の 看護師は 「十五の春」の 面影残せり
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それを見て かわいそうだと思うなら 私たちは一緒になるべきだ
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