但馬吟
2
10
投稿数
214

noteをはじめました。
https://note.com/natsu_no_se/portal

自我きえて味噌汁のにほひ探りつつ獣(けだもの)の這ふ、毛も耳もなく
7
皮と骨で組みたてられしこの身にも朝は黙して降り積む、しろく
6
夜の遠きメトロポオルを醒ますごと消防車両のサイレン聞こゆ
13
音軋み電車のすすむその隅に花梨はつよき香をはなちける
12
長らくに一言すらも交はさずに過ぎゐし朝に君なに思へり
5
山茶花のふふみてなれる垣根にし沿ひて出でたるこの霊園を
8
君おぶり岩肌さけてのぼりける斜面に浜昼顔ひるがへる
4
風よ吹くななにも拐(さら)ふな寝ころびし彼女の痕(あと)は波も消さすな
8
君とほく岬のもとには着かずして浜のまなかでくつろげるかも
5
まんえうしふ たずさへ ゆきし の の みち は むし ゆけ り し も おもおもしく もほゆ
4
踏みはずし踏みはずし猶ほなつかしき音楽堂の渡り廊下も
7
さうだ、きつとおまへは真白に馬車乗つてやつてくるのだ春にもなれば
6
タクシーの窓の遠景に大火事を見つけにけれどそれも過ぎ征く
6
欠けよ欠けよおまへは立派なものでないから欠けて了つて墜落でもせよ
5
合歓(ねぶ)の木の撓(しな)ひてねぶる道ながく青梅街道タクシー忙(せは)しく
9
ぷろじつとの夜に沁みいる民家あり灯しの道はわれをとほさぬ
6
朝注(つ)ぎし紅茶の色の橡の葉を踏みしだきゆく掃苔の路
5
光景をいまだはつかに掌(たなごころ)に持てる心地の黄なる実置きつ
5
嘘をつき猶ほ嘘をつき生き延べる朝、碧空(へきくふ)のいや薄ら月
5
紅茶茶碗(ティカップ)むかひあふころわれと妻と横目に黄なる花櫚のあるも
6
心中の片割れのごとく浮かびゐし薄ら月もはや消えにける時
5
死ね死ねとみな死ね死ねと椋鳥は啼きわたるかもみな死ね死ねと
8
何処(いづこ)より野犬の吠ゆる霽月(せいげつ)のまんまる月だおそろし月だ
8
かへりなむ黄なるトパアズに燦爛(さんらん)す花櫚(かりん)の家にわれかへりなむ
9
湯浴みして仄とにほへるやは肌にひつそりと尾を引きて蜉蝣
7
ゐろ赤きぽつぺん吹ける少年のまなこし青く春の路ゆくも
8
百年はたつた百年と思ゆれどわが生きることはなきの哀しも
6
もみぢ葉は詩集のページのいくつかに乾きて茶なりこれ秋の遺品
7
幾日か前より見たく見たくありからたちの木を今日偶(ぐう)に見ぬ
4
通りゃんせ聴きたくなりて電柱の盲人用センサーに当たる
6