但馬吟
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カレー屋の店主背の低しわれよりも かつその諸手でうまし飯つくる
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昼間より酒に溺れて地を這へるわが眼前に蜥蜴横切る
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昼まより酒を呑みゐて落ちぶれしわれも影ながくありがたく歩く
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やけくそに歌を作れるわれなれば三十一文字みそひともぢのいやにうらまし
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いつかわたし春の虜になりぬれば蛹を破つて出てゆくからね
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朝おきてややに残れる微熱あり そは昨夜ゆふべの夢 名残りとし思ふ
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あからひく日を照りかへし女学生が髪やはらかにくだる坂はも
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たましひが人の形をしてをらず、昼の真中をわれが歩けり
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青春に吹ける魔風に恋風にうちこがれつつをとめ彷徨ふ
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特別が特別ぢやなくなつた日の安堵よ皿でも買ひに行かふか
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生涯でおほよそ九千首を詠める牧水のうたはありがたきかも
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ぬばたまの一夜も落ちずいもへばいざ摘みにゆかん鬼灯の実を
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女竹なよたけの夜ながきほどに君しのび摘みてはすてし鬼燈ほほづきの実ぞ
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海浜のトイレでちんぽこ洗ふ児の砂はさらさら流れ落つ見ゆ
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言葉など作りし人の自我がたまに自身の内部に棲めるごと感ず
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海浜に親子のつくるシャボン玉のいくつ生まれていくつ弾けたか
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君ひろふひろひあつめて何になる貝がらはどれもこれも不恰好
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拾ひてすて、拾ひては捨てし海浜の貝がらどれもこれも不格好
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営みの一切合切とどこほり泥人形にわれはなりななむ
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初等科の黒セーラーの駆けぬけて疾風になつて声だけになつて
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心こそ今やは仇あだとなりななむ君を偲びてこの身燃ゆれば
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ため息の一つこぼるる夜なれば筆も止まりて君を偲びむ
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ふとすればまろき乳房を吸ひたしと百年前の母性を求めぬ
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卒論のテエマ決めをし終へたれど思ひ返してつまらなく感ず
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書を読めば読むほどわれはこの頭蓋に閉ぢ込められむ空想おぼへり
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『小鳥の巣』、『ヴァレリー詩集』、『新しき糧』、『あひゞき』を最近読めり。
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かの歌を作りし人はいかになる世界を生きて来てここにをらむ
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自分など心の底から嫌いだと言ひ捨てながら石ころ拾ふ
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人の詠むうたにこころを突き刺されわれもうた詠むもひどく拙き
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醜くきの親しく感ず夕べには空の水槽に石しきつめむ
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