但馬吟
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妻、われの小さき庭にあからく朝日ふふみて花櫚かりんは黄なり
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ベル型の桐の花咲く五月さつき雨に行潦にはたづみはじくふたつ靴音
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いつからか失くしたものにわがいたはる心なきやとポケツトまさぐる
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あかねさす陽のしたたかな堤にて春負け味の食麺麭パンめる
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ダアリアのボタンのごとく咲きゐたれ しばし眺めてめる心かな
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鎌倉や鶴岡なるやしろを いにしへびとに心馳せつつ
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芭蕉葉ばせをばの傘下に街灯ながめゐる女、横目にその脇あゆむ
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一重なるタヲルを巻きて飲み干せし珈琲牛乳 飲めど飽かぬも
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湯あみせばほのと匂ひてあから曳く肌を包みしタヲルは白し
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銭湯のちんぽこさはに揺れてあり 人間もまた動物なるや
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葉洩れ日をあつめひるがふ紋白蝶もんしろのつがひ追ひ往かむあだし野のみち
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紫の天蓋おろすカトレヤの一輪にさへも人を思ほゆ
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洋蘭はひとつひとつが娘子をとめごの秘めし危うき園にかも似る
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受けてはすて、受けてはすてし桜花。踏みしだかれて濃ゆきその花
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棕櫚しゅろの葉はささらささらに揺れ揺れて実なる無花果いちぢくちらちらと見ゆ
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りんごパイひときれ齧り、カフェーなる窓の戸たたく聞く 雨礫あまつぶて
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鈍色にびいろの午後なればにも出でがたき 仕方なきにとあんずジャム塗る
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葉影よりとび出でし蜂ぶぶと飛び、くれなづむ道。とび逃ぐ、われは!
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冬ごもり晴るる野辺にし出でくれば わつとふきたうあまたあらはる
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花ぐはし桜降る夜の山々を越えさりくればあとははかなく
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白秋も利玄啄木牧水もわれは愛してやまずなりけり
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あかねさす日野駅降りぬ 女学生ら靴音たてて明日を忘れて
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悲しびはびいどろにかも似たりけむ。くはしくかぎろひ、うち解けぬゆゑに
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縷紅草るこうそう 散らまく惜しき 鈍色にびいろの雲を重みか耐へかねて散る
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春を思ふ、ただ春を思ふ。枇杷の木の黄なる実熟す春の日を思ふ。
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底冷えの街頭の隅にあかあかと甲斐なき思想灯りてすぐ消ゆ
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あからく朝日ふふみて花櫚かりんなると黄なる実に添ふる白き手をおぼ
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埃あつきを払ひのけて頬杖をつきて思へり ただ春のこと
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「美しい。」そんなことばを言いわけに、すき放題する虚無主義者ニヒリストごう
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「一生」とかっこつけつつ、ほんとうはその一瞬がうれしけりゃいいの
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