但馬吟
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歌よめば吐瀉を吐き終へ床につくごとき安寧を心に感ず
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酔ふことは頭の中に灰つもり払へど払へど中身なきぞかし
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負け犬と自身を標榜せし歌に何の得あるや?唯の道化や?
5
肝心を告(の)らずその後(のち)はまほろばに君を求めむ幽霊とならむ
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「もう、いいよ」かく云ひ云ひて一点の肝心なことは云はぬ歌あり
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さ丹頬(につら)ふ少女(をとめ)ほろろに花恥ぢて檜扇(ひあふぎ)かざし小路(かうぢ)ゆくかも
4
喪失こそ美しい過程と思わぬか。友人説きぬ。われ頷きぬ。
8
薄暮れの天蓋うつす真鏡澄みて流るる浅川流る
8
花梨の香は、桃、梨、いづれに似つれども花梨の香なり。独特の香なり。
9
花梨黄なり。黄なる花梨をざくざくと割きて煮て詰めてジャムをつくりぬ
5
あから曳(ひ)く朝日ふふみて花櫚(かりん)なると黄なる実欲(ほ)るに妻よびに往(い)ぬ
5
わが心いつゆ何ゆゑ凍てにけむ つゆ思ひつかず風ぞ吹きたる
4
紅茶茶碗(ティカップ)ふたつ並むころあから曳く朝日ふふみて花櫚(かりん)は黄なり
4
角障(つのさは)ふ石(いは)に吹きつく風寒み浜が千鳥そしきり鳴くなる
8
劔太刀(つるぎたち)踏めど踏まねど訪(と)はえこそ え伝はなへば我が死ぬましじ
5
公園の白き倉庫のらくがきは「オカマ星人市川参上」
4
流(なが)し髪ゆひして妹がつくりけむおさげ髪美(は)しく朱牡丹の咲く
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あかねさす紫繻子(ぱあぷるさてん)にくるまりて王女の真似をす吾子、父は馬車
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へいへいと時は過ぎぬるわが家に平安くづすごと郵便来ぬ
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乳当てのすこし小さくなりぬてふ父には云はず母には云へり
5
吾子(あこ)ふたりいひつけ守(も)りぬ室内で衣服たためり平安(おだやか)な春
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わが妻と吾子(あこ)らがわれの健康を思ひやりして酒を呑ませず
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さ丹頬(につら)ふ娘(をとめ)がまろき乳さらし乳当て干せるやをら春の日
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湯あみのち欄干(バルコン)出でし娘子(をとめご)よ夜に浮かぶるけだもの、白き
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新しきロウファーこつこつ音たてて女学生、駅ゆ出陣せるよ
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鳳仙花 己(おれ)に死ねとし云ふがごと赤く咲きゐる赤く咲きゐる
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人工の雲よりもまだ天然のガードレールの方が白い朝
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口語文語交互に一つ二つ三(み)つ歌つくりしてなべて破りぬ
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歌よまむと歩けど何も浮かばなし。雨音聞きても何も浮かばなし。
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思ふこと歌にせむとし思へども言葉少なきに辞書引き出でつ
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