清らかなあの子を抱きしめた腕をきれいに保っていたい春の日
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大根を抱くほんとうは大根じゃないと知りつつ大根を抱く
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誰のものでもない私 きっとそうだなそれがいい
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公を 離して流す 夜の車窓 アタシほんとは天使になりたかった
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子を憂う春も希望にる春も 胸にしまって 米を研ぐ夜
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古い写真は棺で 美しさを閉じ込めていた 今の私は醜いゴム人形のようで 反吐が出そうだ
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ああ 消せない痛みの火傷が滲み 声は爛れ 雨降らし、傘も無い私
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「これからはラインしません。」なんてこと!ほんとは、だけど、消えるべく私
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迷わずに娘のアパート着いたことドアの袋に潜む焼きチュロス
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歯磨き爪切りエンジン点火 拗ね拗ね猫ロケット 太陽系の果てまで行くか
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待ちわびる 種を蒔いたら 楽しみで 毎日発芽 チェックが日課
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正午ひるの陽が 教室へやに注がれ 春一番 散る桜の雨 窓をうつ
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母すらも知らない母に老いてゆくナンバー明かせぬ家に電話す
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オタマボヤも我らエルフと同様に背側神経管を有する
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食べてくれればよろこんでやせてしまえばふさぎこむ気に病む人を猫はただ見る
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誓いなどなんにもなんないわ でも繋いでいたいこの手をずっと
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スンとする塩素の匂い吸い込んで舟が進むよ小さな世界
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名前とはあなたがあなたであるための祈り、もしくは魂の型
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「古民家の蔵の中から出たものです。」 骨董売りは時をならべる
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はねのけた毛布に足を入れなおし眠れ眠れよ母も寝るから
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あなたからもらった言葉忘れないここにいる意味教えてくれた
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出戻りも 懐かしい顔 ほっとする 気持ち新たに 出発進行
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品川と練馬の中にひとつだけ京都ナンバーようおこしやす
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□□□□ができなきゃ大人じゃないらしい ぼくは生涯子ども料金
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せんせいに楽しく数学を教わったあの感情でこれからも生きる
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私はもう君とは二度と会えなくて君のアカウントは無期限停止
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「死」のほうが別れがつらいのわかってるでももう会わないなら死とおなじじゃん
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別れなど知らぬと気持ちで桜咲く美しいけど恨めしき春
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いなくなり「永遠とわ」だと思ってたことを知る別れってのは案外残酷
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考えは生活に宿りうごくもの早寝早起きで私も変わる
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