マンションの共有部分でいぬが鳴き見せしめとして倒された二輪
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砂混じり春の暴風に人が吸い込まれ消える春の嵐
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花が散り 人も散り散り 花筏 花も若葉も ただ淡々と
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気取られず 後ろ上段回し蹴り 壁で踏み切りドロップキック
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反射してかたち現す 粒と波 全て飲み込み平穏を得る/「黒」
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冷蔵庫 杏仁豆腐がひとこと「負けるもんか」と プリンに語りかけ
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Xには少し恥ずかしくて投げられない 言葉の行き場はいつもUtakata
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むしゃくしゃを理由に罪は犯されて君のスマホは新しくなる
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しようもなく生きるのクロッカス咲いた日にここから出ていくため
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話す前 一瞬チラ見の 先方確認 僕は知ってる  君の一旦停止
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鳥の声 風の囁き 花の色 心の波動 春を取り込む
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空白は埋めないでおく ひらめきが孔雀になって飛んでくるから
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胸の内 勝手に占拠 キャパオーバー 好きな人より 嫌いな奴が
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とりわけてきみそぞろの愉しけれ 桜舞い散りハナミズキ咲く
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地響きと 怒号のような 雷鳴に 部屋の真ん中 縮こまりおり
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久々に 雨の振る中 外に出る 道端の花 潤い咲いて
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ルリビタキ 幸せを呼ぶ青い鳥 おみくじでもいい あやかりたいね
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春の風 スカートゆるる その下に 神を見たりと 友は言いけり
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父は鳥 群れに紛れて帰りぬる 黄昏の空 時刻を告げる
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首吊った前住人が毎夜来てとても楽しい格安物件
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舞い上がる花びらたちが描くのは春を追い越す風の輪郭
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おまえさえ居れば地獄に花も咲く 背を追うだけでもわれさきわ
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綺羅宝樹きらほうじゅ、花咲み盛る極楽も おまへ居らずは地獄に同じ
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じりじりと夏の気配が寄ってくる ベッドの上で春を抱える
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恋焦がれ君の姿を追いかけて かなわないと分かっているのに
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一人減り二人減ってはうちよりも西側にし は無いダークゾーンだ
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せわしさにコーンフレークを掻き込んで春居丈高いたけだかに来たりと思う
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チェーンソー唸る音聞くまたひとつ仕舞うのだろうさくらんぼ園地えん
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いつまでも小学校の夢を見る 僕の心はいまでもそこに
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春曇獅子の子のようにヘッドレストへ足の指伸ばしおり
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