春休み給食のない正午には素麺うどん焼きそばで挑み
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形而上 言い表せず 動悸する 全て名も無きものだったのに
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温めた今川焼が熱すぎてああ春なんだと思うたりする
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北目指す白鳥の旅いく日ぞロシアの空も自由に越すか
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ひとりきり無知蒙昧の道進む ちょうちょも飛んでてさみしくないよ
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二歩進み三歩下がって二歩進む そんなものだね子どもの成長
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会ったこと記憶にさえない曾祖母を 動画見ながら君懐かしみ
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ねことねこ ねむたいおかおで みつめあう あっち向いてホイでも はじまるのかな
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蒲公英が地面すれすれ咲いていた春が進むと伸びてくらしい
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遠目にも見よとばかりの鯉のぼり尾の先までも風を孕みて
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火葬炉に残るリン酸カルシウム 土に撒いたら私が芽吹くよ
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消灯の時間ですよと声がした * こころをオフにした * 僕は寝た
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この春も咲き散り終へし桜木に 名残惜しむや残花一輪
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花びらは玄関扉に貼り付いてわたしに春を知らせて尽きる
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川風に身をふるわせて花は散り 芽吹く翠に座をあけわたし
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葉桜は興ざめなりと人の言ふ そはそれなりの見方ありなむ
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焦るほど 鞄を泳ぐ小銭入れ 旅先のバス 整理券どこ?
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高速で過ぎゆく階層傍らに 隣のビルの驚く目と合う/『落下』
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磨かれて石と見まごう光る床 重みで軋む音で木と知る
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何百何千何万回の共同作業を重ね 同じものふうふになっていく
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食卓に夫と我ふたり力作の飯並ぶ嬉しさ
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川べりの桜を愛でに集いてし友の笑顔はあたい千金
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冬に眠る生命いのちを目覚めさせんとや 春の雷神天を翔けたり /春雷
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振り向いた名前で呼んで餌をやる昨日はヒロシだった野良猫
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電線の補修工事をする人の乗るゴンドラが掬う春風
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人生は重き荷を負う旅と言う人にはキャリーバッグを勧める
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風に散る花びら 黒湯温泉に 浮かびて そっと手で掬いけり
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たやすさを 選ばぬ心 ひとしずく 誠を映す 善のココロ
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燗冷まし手相を眺むつくづくと運命線は太く延びたり
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親指のつけ根が痛むまだ親にスマホ代さえ払わせている
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