薄れゆき 淡く色褪せ 記憶ごと 時にほどけて 声も消えゆき
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冗談も嘘も言えない不器用なわたしの「好き」は伝わらないの?
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オレンジの 凌霄花のうぜんかずら 絡みつく 息つまるほど 濃密な夏
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散らかして 掃除してまた 片付けて きれいになるも 終わることなし 
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背後には入道雲の森タワー 蝉の声など聴こえずも夏
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嫌われて 見つかる度に潰される 蚊れらも必死 されどころすの
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昼ごはん ドーナツ食べたの甘いやつ ずらっと並ぶ輪たちを買うたよ
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ただ祈り捧げて今日も舞い踊る 野良ニャンたちも無事であれかし
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休日を空ける必要なくなって 時間を埋めるため観る映画
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盆近し 人の減る通勤電車 大人にも訪る 夏休み
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そういえばあのとき決めた暗号の解き方をまだ忘れてないよ
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両腕の蔦であなたに絡みつくのを抱擁とわたしは呼んだ
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ですよね、ときみはひとりでさっきからワイングラスに相づちを打つ
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クーラーを抜け出しスーパー銭湯へシャンプーと湯は惜しまず使う  
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津波との重なった日の5%オフもいちどやりますいきはからい/いつもの店で
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我を棄て 笑って生きなきゃ赦さない 幸せならなきゃ赦さないから
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祈りの歌 届いているか 朋友とものもと 愛しているよ 三十年越し
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祝!休み あれやるこれやる夢想する まどろむベッドに夢見心地で
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車内にて終わり待ちたるパチンコの 兄と分け合うオレンジジュース
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胸底の 黒いタールを みつめてる 白い世界へ 往く日のために
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庭先に 床几を出して 西瓜食う ついこの前か い~や昔のこと
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直前の会話忘るる幸せを噛み締めている老後の時間
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相槌を打つことだけは得意です なんならフロアを沸かせましょうか?
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きみが飲む散歩終わりの氷水 カランコロンと風鈴に似て
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最後の日 幻滅させてくれたこと今となっては感謝してるの
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安静にしててもどんどん悪くなる 免疫機能ものんびりな私
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「しあわせか?」問いたくなって触れる腹 急所差し出す猫の気まぐれ
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柑橘の はじけるこうと 茶のしずく 新たな風が 朝日をくぐる
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りょく深く日も遮りし等々力とどろきの現し世たゆたう勢田郷せたがやのウラ
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恐れつつ我に飛び込む君のこと抱きしめたくて突き放したい
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