海野水屑  フォロー 6 フォロワー 6 投稿数 47

流れゆく海の水屑は砂浜の君の背中に手を振っている

さよならも言わせてくれぬ歳上の遠い背中に唇を噛む 

君からの大好きだけが欲しかった十五の僕に線香上げる 

しあわせになるのが下手な僕たちは惰性で生きて慣性で死ぬ 

ゆるゆると首を横に振る扇風機 お前もぼくを否定するのか 

親戚の子供に笑いかけている まともな人の振りをしている 

待ってろよ 今すぐお前のとこに行く 夢で逢えたら、なんて言うなよ 

生まれ変わる方法未だ見つからず 資源ごみにもなれない僕ら 

醜悪な肉で得られる肩凝りがそんなに羨ましいか雌共 

教室の窓の外では致死量の夏に生徒が殺されている 

脱衣所の鏡に映る肉体が汚く見えて眼鏡を外す 

部屋干しの下着のそばで香をたく これが現代貴族の贅沢 

打ち寄せる波と目が合ったあの夜から ざざぁ、ざざぁ、と耳鳴りがする 

浴衣帯 きみと別れて日常をひとりで歩く 下駄も泣いてた 

恋は罪 ならば君への執着はこれ以上ない罰なのだろう 

水無月の雨に溶かされたましいは排水溝に流れ出てゆく 

雨降る日君が「綺麗」と褒めてくれた髪を切ったよ もう会えないね 

長いのが好きとあなたが言ったから 髪よ、なるべく早く伸びろよ 

味気ない世界を甘くするための小さじ一杯分の優しさ 

流れゆく海の水屑は砂浜の君の背中に手を振っている 

いつだってきみはぼくのヒーローになる 今から行く、の一言だけで 

潮騒がもういいだろと叫んでる 塞いだぼくを呼び続けてる 

背中越しきみの鼓動に安堵する 生きているのはぼくだけじゃない 

すみれ色した耳飾り いつの日かあなたがくれた私の色だ 

ええ先生、恋は罪悪なんでしょう わかってますよ わかってますとも 

道端で猫の死骸を見た君はきっと天使より美しく泣く 

腕時計利き手に着けておくからさ ひねくれ者に出会える日まで 

草花も蝉も少女もあの恋も、夏はすべてを殺してくれる 

熟れすぎて腐ってしまうくらいなら少女のままで死んでいきたい 

教えてよ 愛した人と沈みゆく水はどれほど優しかったか 

眠るよう死んでいきたいだけなのに朝日が今日も私を生かす