V字描き低く飛び行く白鳥の見ゆる大地の白ひと色に
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おみくじをぐるぐる回し引き当てる大吉手にし蒼天仰ぐ
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あかるさに慣れてしまった化物は二度と夜には帰れないのに
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大空をパラセーリング羽ばたいてこれが「自由」の代名詞かも
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煮え切らない暮らしをほんの少しだけ あなたに褒めてもらいたいだけ
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ほくろとかシミとか、数えると増えるよ  じゃあ幸せも? ひいふうみ
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両手上げ「わからなーい」とリアクション見せられ思考がとまった会話
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医者の出す抗鬱薬は効かないが 愛の言葉が私を癒す
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日の暮れにとなりの花を羨んだ 伏せたまつげの初心うぶなきらめき
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何故にファンヒーターは裸に近い格好のとき石油無くなる
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フロントガラスに潰れる水滴がざらつきだして右足硬い
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手放してようやくそれと気づきます落下している無重力です
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おとなしいことは優しいことじゃない果汁ゼロ%のジュース飲み干す
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一人では生きていけないとは言えど平気で生きていく憎らしさ
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神様みたいな君を崇めては僕の心はいっぱいになる
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吹かれ行く木の葉は円を描いてる 私の風はどこへ行くのか
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市長は蜥蜴に生け捕りの餌を与へ夫人歿後の伴侶
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あなたの服箱に詰めつつ言い聞かす 夢を見ていたわけじゃないって
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一枚の証明写真印刷されひとつにしてひとりならざる
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よんさいで 吹き矢のみこみ 窒息し そのご六十年 ながいゆめ 余生 /歌で個人史 過去歌
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数合わせ 一夜限りの うたげにて さかずき交わす 名も知らぬ人
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遠浅の渚ようやく指さきをつめたく濡らしじっと手を見る
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祈っても助からぬもの祈ってもこぼれてしまうじっと手を見る
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あらっても落ちない血のり太陽にこわごわ透かしじっと手を見る
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お廊下で ニャンニャン呼ぶのを聞きながら 高速でオフロ済ませる ねこ母
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マフラーを手繰り寄せている十一月    オキシトシンを享受させてね
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温かいスープに浸かる 鮮やかな色とりもどす 野菜みたいに
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甘酒は砂糖控えめ母の味 粕と生姜がじんわり沁みる
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キス顔の練習してる鏡の前 視界のすみに母親の視線
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切先を自らの喉突きつけて普通を語る人の危うさ
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