通り雨静まりかえるこの部屋で夏くる覚悟決めたる如し
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ぴかぴかのおうちの屋根に予定調和の夕方がのっている
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紅茶飲む君が小鳥に似てるとき僕は真青な空になりたい
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桜散りマスクを外し夏空を恋う僕がゆく風花のみち
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息をつく間も無い毎日いつの間に季節進みて山菜並ぶ
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万博を出れば夕焼け包まれて今なら君に言える言葉が
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満月に水の張りたる田圃みち月影と共に我が家へ辿たど
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信号を待つ間に脇道ふと見れば疲れ目癒すヤマブキの花
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鳥海山とりみやま秋に伐りたる粗朶ぞだあまた吹雪の山路馬橇ばそりで運ぶ
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母つくる田楽 でんがく焼の木の芽とる 山椒のかおり指に残れり
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妻つくる昼のラ‐ メン添え物の庭で摘みたる三つ葉が香る
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触れる手にいつもの熱がなかったの君の虚しい指が震える
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どら焼きは贈ったけれど 当日母の日に モスかミスドでもLINEギフトで
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アイスの日に母とアイスの話して 話だけして食べそびれたり
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母の日に花より団子の化粧水 若くなれよと白寿の母に
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雨音は止み 戸を開けて 一呼吸 雨の残り香吸いて 散策
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花びらは アスファルトにさえ 解けてゆく 桜という名の かたちを借りて
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あの夜の喉突きたてる包丁の指先震え 幻覚を見る
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広告のアンドロイドのゲームってロボットのする遊びと思い
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琴線にふれた短歌を書き留めるノートに「1」と書き足した朝
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やりたいことをやらねば自分から死んでしまう しょうがねえ、やるか
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血のいろも こんなに紅くはなかろうて ルビーレッド(キウイ)の真紅の断面
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いれかわり 寝室入ってった ねこ おかあちゃんのねてたとこ ぬくい
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剥離した記憶の花のひとひらに たからものなど混じっていたらし
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気晴らしにサンダル履きで出た父は 冬になっても戻って来ない
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春雨の激しく降りし庭一面チㇼアヤメ咲く空色の花
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今朝目覚めくりや にたてば鼻を突く味噌󠄀汁にほふお袋のせな
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何故売れぬかえりみるより何故買わぬるものだけ買う暮らし変わらず
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打ち解けた 時にはもう 別れが近くて 思い出の ミステリガール
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壁掛けの絵が外されて蝋燭に照らされし君しおらしくいて
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