薄曇りの夕焼け淡く柔らかく心のひびにじわり沁み入る
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あらためて「仰臥漫録」読み返す 食欲こそが生の体幹
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世の中に魅力的だが流行らぬは 宇宙食付き月面旅行
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世の中に便利なようで流行らぬは 自動運転空飛ぶ車
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世の中に便利なようで流行らぬは 人間自動洗濯機かな
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ぼんやりと写真眺めて過ごしたい 明日に迫った長女猫あのこの命日
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弛まざる献身の先に信頼の証として見たいぬの肉球
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一粒の米てふ努力炊き上げて作るおむすび味わひて喰む
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春キャベツちぎるときだけ思い出す故郷の土に沈む夕日を
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珈琲を飲みながらする部屋掃除終わる気がせずおかわり五杯目
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悔しさを寝室に置き忘れきた 欲望のまま次へ踏み出す
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「懐かしい」そよ風の中きみが指す「仮免のときこすったブロック」
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黒い腹 お前と俺で「死招き草」 ぶち込み咲いた綺麗はどっち/悪党
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蛇口から 消え入るような 細い水 姿はまるで 獲物をとる蛇
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武器ペンをとり 地図ノートを広げて 作戦立案 きっと今夜は 革命前夜
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同僚が別の誰かと飯に行く 僕は一度も誘われてない
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歯のメンテ もう二十年来 通う歯科 いまだに知らず 医師せんせいの顔
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薄日差す昼時の街 冷房クーラーの如し 梅雨入り前のそよ風
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今日は早番はや 明日あすは遅番 明後日は わたしは宇宙漂う迷子
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じわじわと研いだナイフに削がれてくその度細くなっていく夢
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黒線で切られていると気付かずにすりんすりんと北へ行く雲
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音もなく広告収入 熱を持つ端末だけが月をみていた
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他人からくらったNOで出来た殻 破ればそこに花が開いた
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君が好き 離れていても 振り向けば 心の中に いつもいるから
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涼しくも曇った下の散歩では気も晴れぬままただ歩くのみ
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火照るのは夕日の所為か昂揚か 合格の文字反芻しつつ
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草原で星を見上げて手を伸ばす一つ二つとポッケの中へ
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進む度落ちる夕日が遠ざかり確かに僕はここにいるのに
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全員が オフピーク通勤 したならば そこがピークに なりはしないか?
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春実り出会いと別れが過ぎ去って俺とお前は似た者同士
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