想像フィクションの世界が唯一せいじょうで 現実なんてきたないだけの
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気紛れで髪を丸めて早二年 既に肩甲骨まで伸びて /2025.5.23
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願わくば生まれてなんて来なければ 性加害など受けずにすんだ
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楽しげに鼻歌歌う夕暮れの あなたと暮らす日々の花束
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つぎつぎと緊張たちが弛緩して大浴場に咲いてゆく《一》
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眠れない夜があるきみの胸からノイズが消えることが怖くて
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本棚のスキマにうめく悪魔らを封印せんと買って、積読
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晴天を四捨五入して明後日もその明後日も灰色にする
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ハイライト 夜間飛行の暗がりで 笑うあなたの歯がぼんやりと
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いつからか夜が怖くはなくなって朝が来るのがつまらなくなる
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寒いのも 暑いのも嫌 でもなぜか ちょうど良い時 翌日気付く
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生活のそばにいて 見てニュータウン なんでも無いけど写真撮ろうよ
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体操着汗ばむ胸と青桜爽風吹けば地面には種
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指先に半透明の球体がいるので今日はネットを見せる
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初鶴の去る八月の帰り路 祭りのあとの家の灯りは
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フィルターを通して分かるAIの思うあなたの皺と年齢
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スズメの餌ねらうカラスの執拗さ夫との攻防あと幾日ぞ
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「あの頃さ、あなたのことが好きだった」  『掟の門』を読みかえす 冬
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揺れている若葉の枝も魂も五月の風が吹き抜けてゆく
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名前のわからないペンギンの前髪みたいな寝ぐせをパシャリ
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お呼び出し身に覚えのない怒られか ドキドキするから今週やってよ
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岐路に立ち 悩む背中の 後押しは 無垢な子供の 夢の温もり
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犬を飼う 子供の願い それだけで 住む場所に今 思い巡らす
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瞳孔を開きて網膜覗き見る心の奥を見透かすように
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昔から出てはひっこみ出ては消え 未だ流行らぬ3D映画
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青葉寒夕日も見えぬ曇り空知らぬ窓から香り立つバブ
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薄曇りの夕焼け淡く柔らかく心のひびにじわり沁み入る
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あらためて「仰臥漫録」読み返す 食欲こそが生の体幹
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世の中に魅力的だが流行らぬは 宇宙食付き月面旅行
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世の中に便利なようで流行らぬは 自動運転空飛ぶ車
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