大好きな あの町に行く その度に また好きになる 心は不思議
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使われた後の食器は醜いと思う私は何に使われたのか
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梅雨前の天ひさかたの笑み見せて 浮かれし風の薫り過ぎゆく
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はかなくも枯れゆく躑躅ツツジ 労いの眼差し送る 「また来年」と
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母への愛 溢れてベッドの端なれば 気をつけ姿勢に 腕や足乗せ
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五月末まさかの氷雨におどろいて ぼらがぴょんと跳ぶなり
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「勝手に来てお茶飲んでるのぬらりひょん?」「いいえ隣のボケ爺さんです」
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女房に「私は女中?」と問われたら 「私は下男?」と問い返してやろう
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夏前を忘れぬための一呼吸 あの世みたいに美しい朝
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記念日に 渡せる時を 願いつつ 2ヶ月遅れの 桃の紅茶
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病にてつぼみのままに枯れるなか童の顔の泰山木咲く
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来る夏の 明るい時間 灯台に 今は嵐の 波を渡ろう
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遭難せしタケノコ採りの捜索に防災ヘリが空しく輪を
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日常に突如降り来る厄介も ひょいと抜けたし吹く風に乗せ
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風薫る 早苗の水面揺らめいて 黄金こがねに染まる夢膨らみて 
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協調は「束の間」だった  諍いを 避けて未来を 築けぬものか
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AIの福祉を受ける情けない大の大人として生きている
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泣いたりはしないはずだったあなたの鼻炎に交じりかなしみが落つ
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AIに自分の作った詩を読ませ ユーモアを分析される時間
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続編が楽しみだった日のふたり しのびひとりレイトショーの
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くるぶしの火傷の痛みを告げぬまま走るよ君も夏も駆け足
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今日もまた彼らは私の脳内で勝手に生きたり死んだりしている
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幼子を おさげに結うや 春昼の 抱かるる人形 君とおそろい
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先を行く人の歩幅にならう朝 推進力も人任せにし
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泣き止まず 泣き止まずいる 少年の 震える指が 俺には眩しい
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飄々ひょうひょうと 街を温める 深緑しんりょくよ ただにわか雨の 色にも染まらず
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ないことはあることだって言うきみの硝子管からあふれるひかり
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夜に目覚め ふと窓開ければ 手遅れの 優しいあの子を 抱いた気分だ
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梅雨つゆ来たる 前に家から 飛び出して 朝一番の 教室を嗅ぐ
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今日一番ツイていたこと布団から無くしたリップが見つかった事
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