そっと見る 秋の小川の二羽の鴨 溶け合う波紋で愛を深めて
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この指は幾つの罪を重ねてきたの 私の他にはもう味見はさせぬ
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今さらにあなたは禁煙しなくていいよ ほらウイスキーもあるだけ飲めば?
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安物のピーナツバターの味気無さまあ許せるか吾も似たもの
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涙では流しきれない悲しみはいつかの背伸びでふわり召される
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顔が好きそれで良かったあの頃はまだ馬鹿で眩しい暴走だった
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「秋らしくない天気っていうことが秋だね」ときみは傘回しつつ
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煙出づ玩具がそんなに吸いたいかふたりの話よりも大切?
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寒くなる→膝激痛が来る前になんとかせばと悶える毎日
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着信の君の名前が忘れさす  満員電車も嫌味なアイツも
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いい馬に見惚れて出資デビュー戦 駆ける命が火花を散らして
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永久死 甘くて痛くて致命的 わたしはあなたの虫歯になりたい
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旧居には知らぬ車の停まりおり 吾子探す癖六年ぶりの
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タイトルを 短歌で詠んで エッセイ書く 新たな手法で 大海漂う
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ケンカして正しいことを言うほどにさみしい気持ちでいっぱいになる
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雲割って一気に落ちてきた陽ざし秋とは思えぬ重たさがある
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逝きし友息子の家の居間に収まりて遺影の笑顔は何を語らん
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退屈を 埋める為にと 会食へ 似た者同士 互いに陰口
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平泉と関ヶ原とこの田んぼ道をつなぐ夢夏草踏み行く
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竹馬の友 臓器の病で 心病み ライン送信 未読の切なさ
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垂れて乾いた青春はいずこ 記憶を頼りに面皰跡を人差し指でなじる
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執着を手放した夜の青い月孤独なようで自由で身軽
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たらこスパ 盛りつけられてる命の数に ふとぎょっとしてとろけるバター
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背中の絵 どうしてれたの?「──若気の至り。」  いえ、どんなひとって聞いてるの
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夕露に湿ってかおる体操着この闇の中二人は一匹
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やわらかな糸の温もり編み繋ぐ 秋深めゆく雨の夜長に
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憎めども抜け出せぬ指 織り重ね 我ら蝙蝠コウモリ昼を忘れり
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アクリルの向こうのイルカもこちら側君のおでこも遠い空色
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ほぼ真ん丸 斜めうしろの 月のごと 縁ある人々 あかるく照らしたき
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うたいびと色んな流儀あり過ぎてシェイカーの渦中ヘナヘナ回され
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