窓際で途切れ途切れの声させる蝉の末期を聞き届ける夕
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飢えることなくなったけど食べすぎが殺しにくるのランゲルハンス
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自らの 意思に従い 決められた とおりに進む メニューの中で
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この日々を醸造かけて蒸留し 米1960と銘柄をつく
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会話なぞ 前戯にすぎぬ 儚きを もって勤しめ 愚かな罠に
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「生きてれば良いことあるさ」なんてのは生き残った人しか言えない
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内側の世界に畑耕して 米や野菜や酒醸そうか
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人生は 一つ一つの 人格を 作りあげたる 神の作品
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単数形生活感のアパートのこおりは溶けて夏のしじまに
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枯れ果てたオマタジャクシの群れのこと想うひとりひとりの筆跡
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ひとらしく踊れる土地をさがせども地球の果てに義足がひとつ
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時間とは 人が感じる 尺度にて 物理にあらず 命の履歴
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生物は 新陳代謝 激しくて 若い芽が伸び 古きは枯れる
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着実に 脳の機能が 衰えて ポンコツになる 年取る程に
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温暖化 異常気象が 常態化 何が異常か 忘れる程に
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病気さえ 我が人生を 導けば 苦労も決して 無駄にはならず
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たかが飴 咳き込む我を 一粒で 深き眠りに 誘いたもう
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赤い月爪で引き裂く母つまり太古の夕陽叫ぶ密林
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LJKコロナ禍生きる私たち青春はどこ?と笑う友達
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カーテンの隙間から青差してきてスマホを置いて寝るよるのあと
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ガンダムや龍や戦車で帰りゆく先祖は笑う盆は過ぎゆく
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「次会ったとき返すから」嘯いて知らぬ体温うつした指輪
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夕立の残り香連れて侵す指 暮れる音すら聞こえぬところ
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ベランダで干からびること想像し視線突き刺さる夏室外機
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感傷の道具ではないひめゆりの塔フードコートにいるおばあさん
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雪でもなく砂でもなくただしんしんと眼の奥を埋めてゆく「もうやだ」
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昼中にパンジャンドラム楽器だと思い込んでる君の青シャツ
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父からの手紙に励まされる今日は受験の年の誕生日なり
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ポケットに玉子蒸しパン差してみる。玉江の浦の砂嘴の月かも
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波音におどろ踏みわけ丘に来た。つきの御影に、小待宵草
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