Utakata
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立葵崩れたままの中庭に青い如雨露をかたむけていた
10
雨上がりの腕に小蜘蛛をまとわせてすこしだけ高い空を見ていた
17
それぞれの軌道を見せてゆるやかにつばめ散開する町はずれ
15
灰色の世界が変わる海の辺にあまねく光ゆきわたるとき
17
蟹の爪ひからびている海岸に薄墨色の雲を数える
15
どっぷりと水平線を焦がしては「また明日ね」と夕暮れなずむ
15
ぽつぽつと地面をぬらす街中に次々と咲く大きい花よ
8
新しい自分に逢いに行こうよとはさみ片手に髪切り落とし
18
キラキラ号、と名前のついたバスだからいつまでも見送る池袋
7
人のとなりで何度も目を覚ます夜の、アメリカの山火事、音のない
9
恋人の町から雨は降りはじめ、濡れた地面のInstagram
11
紫陽花
(
しようか
)
が咲いたら何かしようかな 2ヶ月越えた休職期間
23
君の蔓 重ね滴る 紅い花 襞の奥から この世の果てへ
9
ギター弾く人のうしろを通るとき振り向かないでくれと願った
10
海岸の無機質の山 戻せない時間を収める音は無機質
7
ふんだくる ふんだくるくる ふんだくる カネからヤツを ふんだくるのよ
22
おひるねは 怠惰ではない お仕事の能率を上げ 合理的なの
18
バラストの灼ける匂いと風の音ローカル線のホームにひとり
18
後ろ手にまとめた手を引かれ行きいやだいやだと大喜びして
13
本棚は古本の香り十五年積み重なった私とあなた
22
雲の色をたしかめたくて
水平線
(
ホライズン
)
大きな海のはじまりに着く
18
みみうしろ やわらか猫毛 もふもふし 思い出すのは 子猫の時代
18
逆光のなかにある街 清水の舞台の傾斜たしかめながら
14
この町の
駅舎
(
えき
)
のライトに照らされてひとりにひとつずつ影はある
47
簡単な人でありたい薄い雲ばかり行き交う夏空のもと
32
球体の破壊あるいはたんぽぽの綿毛をとばす 遠くへ あるいは
24
ゆび先の 当たるつよさは 不安定 だけど気持ちは ショパンかリスト
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ゆきどけに水面はあり冬舗道ひかりを受けていずこにも空
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