暑過ぎず寒過ぎぬ日の心地良き 短きものと思えばなおさら
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このバスに乗っている客は皆が皆三島由紀夫を黙読している
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カーテンの向こうで虫の声だけがアスファルトを濡らしている
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バーベキュー義父とふたりで昼寝する妻子の声はとほくに聞こえ
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真夜中に食べてもバレぬもの漁り結晶化したハチミツを食ふ
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ねこたちは かんづめうまうま かおあらう あしたはあめかね それもあるけど
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母の日のギフト早めに贈るわれ 早すぎて義母はあやうく旅行日(帰宅の日だった、セーフ😅)
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春中の カヌレを齧る 沿線は ピアノと涙と 4月のかをり
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葉は茂り 河津桜の 実はりて 卯月の風の 揺るる葉の音
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老人会LINEへようこそ 胸躍るウェルカムスタンプどれにしようか
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茉莉花ジャスミンが微風乗ってこの路を 君との記憶羽衣の夜
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旅支度たびじたく 一匹ひとり減ったる 愛犬の分の らぬ荷物に 心とらわれ
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地ビールの店を出てなお夕焼けで明日も晴れだね桜見上げて
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躑躅だけ原色で咲く昼が過ぎちょっと手を振る色褪せぬ君
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絶望と希望のあいの子としてはアンチノミーを生きるしかない
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春はもう此処に在らずと知った時紫陽花の葉の緑色濃く
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街中の向こうに見える山々はいつか知らない昔からある
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無理してた エスプレッソは もうやめた あの時、気付いていたなら カフェオレボール
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請はるれば爺医なれども青森へ通勤せむと緊褌一番
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思春期の 男子にしては 健全な 外遊びだが 我は気がかり
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ボール投げ 隣家の男子 壁跳ねて フェンスに当たる 音が気になり
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生きていることはすごいね君という花に出会って泣きそうになる
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また一人やめていくのは慣れたけど別れ際の笑顔は慣れない
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これ以上 今のままでも いられない ルビコン川の 向こう岸見つめ
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みんなスマホを見てるから電車内で変顔を生み出せてしまう
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受け入れることが出来たら散らかった部屋の掃除も始められそう
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水を飲むと流れを身のうちに感じるあの人もそうだといいのに
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ゆくりなく 化粧を覚えた 姉の袖から いちごジャムの 香りがした
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傘を投げ 雨雲見上げる 君の目は 雨か涙か 溢れそうだ
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聞いたまま急ぎメモした備忘録 自分の書いた文字が読めない
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