七十三 喜寿も米寿も先だけど 母の誕生日バースデー 毎年いつものランチに
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納豆のラベル上のアンニュイな眼差しくらりつい籠の中
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納豆のラベル横の可愛くて貼って眺める甘麹たれ
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曲がるべき 角を曲がれぬ 夏の朝 道行く人から 顔を背ける
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東京の 満員電車は 慣れたけど 地元の汽車の 閑散も恋しい
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満員電車 女性と接触 汗にじむ 制汗剤よ 力を貸して
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うたかたの 皆の短歌が 愛おしく 人間らしさ ずしりと沁みる
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そうやって両手を取って回ったら僕の世界はただ君ばかり
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多種多様 十人十色 様々に あなたはあなたの 色のままで
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「普通」という 檻の中で 生き耐える 出られたら楽 かなとも思う
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何年も境界を引けないまま夜はふける 憎悪と執着マーブル模様
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戯れに呟きてもまだ応え無く 鳴かざりし鳥を 眺む夏の日
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好きも嫌いも軽くなった世界で カメラ越しに振り撒かれる愛よ
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ひとときの輝き見るたび 常削る 心を亡くし銭も無くし
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電気消しベッド戻るとき 床にいる ねこ踏まないよう すり足で戻る
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ねこ母をフミフミで起こす術おぼえ ねこ朝ゴハン 今日も1時半
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名作を見た翌朝の台所 卵焼き焼き、センチメンタル。
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減りゆかぬ 課題に埋もれて 時計見る もうシンデレラも寝る頃だろうに
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純粋な楽しさなんて小3の夏休み以来感じてないかも
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遅ればせ秋の気配の朝夕にシフォンブラウス似合いの婦人
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長文にすべきをあえて短歌にし、誤解されてもまあ仕方ない
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紫の煙がピンクに見えた 副流煙越しの君が好きだよ
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つまらない大人になった 淡々と見つめる先で花火弾ける
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裾が濡れると言うのも聞かずに波に足浸す君が欲しくなる
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一歩踏み出そう そんなことくらい分かってるんだ 分かってるんだ
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抑制が美徳じゃないと私たち知ってはいても今日もこんなだ
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美味しいの あなたの淹れた コーヒーが その一言ひとことで 騙されている
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人類は カルバンクラインの パンツ履け 香水は マルジェラにしろ
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祖母が言う バラが好きなの それよりも  それ見る夫の 横顔が好き
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人と人 支え合っての 人ならば  独りの私 人一人未満
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