生れ乍らに被爆者だったヒロシマの消えぬ憎しみ超える前死去
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この先は九十一まで母さんはしっかりしてた俺どうなのよ
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ありふれた 普通の日々が 引きちぎれ あの日からもう 13とおあまりみつ
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雪の夜に 哺乳瓶を洗う水 街中彷徨い 途方にくれし
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君の背を いつも見ているだけの僕 教室の隅で 駅のホームで
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今になっても 実感なんて わかないけれど 一応考える 締めの挨拶
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ちま猫は おみずのむとき おかあちゃんに みててほしいの ずっとみててね
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なんとなく体育館の床が眩しい黙祷の群れの中
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壁に刺した画鋲の痕、視線の正体お前だったか
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部長さあ さすがにそれは やめてほしい 何回目なの その紙コップ
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水を飲む ただ水を飲む 水を飲む 痩身願いて 日に2リットル
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花粉だとくしゃみで怒る春一番追い風にのる君を見送る
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壁一枚 今 と隔たる庭園で春の光に燥いだ水面
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この下にあの日のまちがもう一つあって確かに息をしている
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風光る寂れた稲荷小石川一杯の茶碗に残る信仰
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悲しみは変わらなかった13年 今日もあなたへ祈っています
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荒地にて黄色くはえる菜の花とパワーショベルはどちらがつよい?
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13年 経てもあの日は 甦る 瞼閉じれば 涙流るる
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尋ねつる宿をこことや知らすらむ竹の奥なる鴬の声
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お好み焼きバーガー模して 冷凍の豚玉チンして パンのおともに
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一年の経過観察受くる身にまったく白き春の光線
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家系の スープからしか 得られぬもの 五臓六腑に 沁み渡る
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いま絶対アンパンマンって言ったよね 空耳増える一歳の親
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ぴょんぴょんとママのスキップ真似をする できてるつもり嬉しげ二歳
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珈琲の 器具ドリッパーをかえたら 味かわり お湯の注ぎを 試行錯誤す
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紙一枚 一緒になるも 別れるも 大事なことは どうありたいか
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なぜ笑う おれもお前も 好きな服 着ているだけだ 口閉じろ
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豆を買い 量を測って ミルにかけ お湯を注いで 香り楽しむ
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次男のクラスに避難転入せしお子は故郷ふくしまの街に戻れただろうか
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久方に 輸入菓子店 訪ねれば 値札に驚く 円安実感
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