なほあはし 散りくる花にかくれては しをらしくむ山のさくらは
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花のの かたきつぼみの春けて にぬるむ風を受けなむ
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君が言う「好き」はヒラヒラ飛んでって換気扇から夜に消えてく
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休みも混み混み、電車の旅、暖かい一日でした
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ナデナデを待って自ら立っちする 手のひらに頭ごーん、をするねこ
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看板を下ろしたお琴教室の壁の日焼けのあとに春風
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将来は何になりたい? 回答を待たずリネンに鋏を入れる
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ふと気付く 袖から覗く 片糸の 床に伏せった 私は惨め
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大声で「カレシできたか?」くそうざい 囁かれてもきもいから罪
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皿のふちきゅっと握って離さない生たこの足死んでるくせに
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この皿は広くて浅いみずたまりブリュレの焦げが大きくできる
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珈琲を 冷たく飲みたい この陽気 アイスの淹れ方 忘れて検索
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だれがどう言おうと好きだった ビニール傘ごしに滲む街燈よ
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憧れが ぽつり浮かんで 見え隠れ 水面を滑る 桜ひとひら
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丁度いい手摺があったから踏み外したのにあいつはもういない
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きみのその柔らかな頬と空気の境界をあいまいにする産毛
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「ずっといていいんだぞ」とぽつり 古い緑茶と桜餅
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知ってる道に知らない花が咲いている あったかいね春がきたね
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野花にさきを越された 春が来るなら予習しておけばよかった
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コンビニのおでんを探す自販機に増える冷たいお茶春が来る
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大阪市中央区居酒屋トイレにてひとりぼっちを自覚する
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夢の中ですらあなたが出ていかないスイッチを切ることもできない
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滑らかな皮膚とくびれた四肢の皺這えよキャタピラ冷たい床を
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薄皮の下の冷たさ体液が確かに流るる赤子の指よ
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先人の言葉に齟齬そごなし「魔の二歳」 もうすぐ迎える悪魔の三歳
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「やっぱイヤ」近頃多いウチの二歳 イヤにひと手間かけてくれるな
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すべてがくだらなくなり後悔する 春の日の午後、寝室にて
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実家にて 車で買い出し 親孝行 小豆ともち米 牡丹餅の準備
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自尊心過去最低で起きれない これはいわゆる鬱再発か
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どうせだめ そう思うのが 後遺症 何も自分が 信じられなく
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