捨て猫と覚めない雨が秘めた熱夕暮れの意味知らないままで
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おほきなる鳥わが腕を掠めしとき祖の恐竜立ちあらはれたり
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くたびれた境界線の融解を愛と呼ばずしてなんと呼ぼうか
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真白き雲みなの思ひを吸ひ込みてふわんふわんと丸くふくれゆく
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今われは生きているのだとふいに思うたとえばバスに揺られるときに
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山くだる滑って飛んで骨折し年相応の山姥となる
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今日もまた右手をいたわり日が暮れる術後のリハビリはるかな道程
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一人きり缶チューハイは三缶目時間の流れ身体を揺らす
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香箱は リラックスしてるすわりかた ちま猫ちゃんは かたてをだすよ
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一人きり寂しいけれど嬉しくて私の好きな贅沢の中
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愛犬が試食の餌を吐き出して 店員気遣う冷や汗飼い主
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私だけの海に貝殻を当てた耳から潮騒だけのモノフォニー
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セミの抜け殻を薬指に添えて見せてきた君が眩しかった
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手を貸すといーよ嫌よいーよ嫌よと怒られる 吾子は一人でズボンが履ける
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煙の木は漆種なればかぶれぬやう完全防備で剪定をせり
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あなたが見つけたハクチョウの指輪はかわいかったね 懐かしいよね
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テレビから あの頃流行はやった 歌流れ 遺影の君に 手マイク向ける
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不審者に注意の張り紙 そういえば明日の昼間に猫が来る
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傷口に似た思い出が血を流す ずっとあかくてあつくていたい
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アパートの間の気配に立ち止まり逢瀬の途中の猫と目が合う
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君の手を光る飛沫がすりぬけた 私はひどく汗をかいてた
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肩書きを問われれば時間是れ無く瞬時を生くる風の精とも
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右の手はインクで染めたモノクロでフリーハンドの愛は物憂げ
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釣り切れの文字で躊躇う資本主義花火は今日の夜には止むよう
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海の日の制定理由さて置くもせめてこの日は梅雨晴れであれ
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晴天の霹靂らしいこの空をそういう君の眼に僕を
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君の庭鮮やかに咲く花々を帰り道には抱えている僕
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「立て飢えたる者よ」と言えど それほど飢えたる者なし
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紙馬券馬名明記で推し活が捗り嬉し思い出フォト
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アナログのいい所とは感覚で理解ができる直感的に
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