休み明け書類で見えなくなっている貞子を超える恐怖の机
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死亡率ワーストワンの故郷ふるさと他所よそとの命の格差を嘆く
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薬飲み多少つらくも出社する 元凶むすこに有給すべて使った
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裏庭に石楠花植えた人の逝く 今年は蕾も一つか二つ
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小さきもはっきり色持つ野の花に 甘えたくなる春の終わりに
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まじないをかけるしかないメンタルの 行き場失いさ迷う夜は
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新緑に奪われし目に異物とし 飛び込んでくる吾の右手
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千両役者だね君の芸騙された甘いささやきもう過去にする
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の名前 君の名字を貰えたら 完成するの 最後の欠片ピース
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いつからか 恋に変わった 仲の良さ 付かず離れず 距離を保って
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寂しいと 思う気持ちを 乗り越えて 前を向いたら 何かに出会う?
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女の子は誰でも女を呪っている 自分の下着を汚した分だけ
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五月七日 少し誕生 遅刻かも 憂鬱な世間 浮かれる私
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効率にコスパタイパと小うるさし生くることこそいたづらなるらめ
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あゝまた やっちまったよ 前髪で 明日あしたからは 眉毛を隠す
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死にたいと言ったあなたの手を握る  死なないでくれと告げる代わりに
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葉ざくらの緑が増して去っていくゴールデンウィーク子らに逢えずに
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兵士つはもの故郷くにに歸ればよき隣人同じき人ぞひとを殺める
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神西清のチェーホフの訳の美しさ詩情の豊かさを誰かに伝えたい
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この庭に 色をつけたい カラフルに 愛しい種と 好きのシャワーで
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小雨烟り宇宙の存在に思いを馳せる深夜一時鉄のような黒い夜
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腕に抱えた子供の存在の重さに励まされる日々の連なり
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苦しみという概念を知らぬ最上の幸福苦しまないで莫迦になりたい
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今日こそは早く寝るぞと意気込んで 0時を過ぎたよ駄目そうだなこれ
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生かされているという感覚はまた生きるという根拠になり得る
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烏賊釣りのランプが海に溶けている午前三時に見惚れる灯
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ポストからぼくの手紙をこいぶみ取り出して、しろやぎさんが読まずに食べろ
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気晴らしにつけたゲームのデータには久しぶりに見るあの子の名前
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利用して頼られてると思わせるずるい女は「拒否」にして置く
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茹で上がる菜花水へと離すとき鮮けきみどりの一瞬増せり
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