雪消えて地面を見れば瑞々し草の芽も早背伸びしている
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追憶が層を成しては花弁に ハレもケもない春の呼び声
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絵が好きなあなたなら絵を乗り越えることのできない壁にも飾る
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ランコース 歩いて気づく 鳥の声
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寝たきりと言えばうちもと独り者母る野郎二人見つかり
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禅宗の修行のルーティン見て思ふ わたしは逆に「自由」に縛られ
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頬を刺す北の風にも春の陽の彼岸の入りの牡丹餅ぼたも亡母ぼうぼ
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屋根の上身の丈程もあった雪いつか退き汚れたトタン
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映画より君が気になる結末と引き換えに見る君の横顔
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天空から 呼びとめられて ハッとする 陽をね渡る 四羽の白鳥 / 一番乗り着ました
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手際良く落ち葉すくひし老人の水車の音聞くひと日始まる
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窓外は余寒の雪に雨混じる春分間近の月曜の朝
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省みて 山あり谷あり我が人生 不器用なれど処世よわたり知らず 
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久々に続編の出たシリーズにあれ誰何と記憶を浚う
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振り仰ぐ輝く白で気を裂いてV字崩さず滑りゆく鳥
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「ここ三年、積もってなくて」と純白に 足跡増やす 埼玉の君
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四つ打ちの重低音が響く胸にはないきっとぼくのこころは
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終電で変身ベルト締めながら明日の会議のプレゼン思う
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後ろから突き落とされて青空がどおんどおんと波打っていた
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ペンギンはにんげんたちをじっと見てべつになんにも考えてない
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だるそうなあなたをひとり教室に呼ぶ卒業を人質にして
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今日こそは 帰ってきたら 絶対に 片付けようと 思ってただけ
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神様がこの世を作り出したなら全知全能も程度が知れる
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三月の雪が心を冷やすから明日着ていく服は黒服
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我儘も全て老化のせいにする母はこれまでどん底だった
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借り物の知識で埋まるストレージ 取り出せないほど奥にアルバム
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血糖値 上がってキツいが やめられぬ 春の祭りに 唆されて
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これが愛だと確信はできないが そうならいいな、とは思います
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少しだけ キラキラしたもの見たくって  玩具みたいな指輪をはめた
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スーパーにたくさん並ぶ牡丹餅は吾のためでなく彼岸のお供え
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