なつ椿 己が露命ろめいを知りながら あしたには咲きゆふべには散る
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建物と空の高さは比例して田舎帰れば頭に日焼け
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曇り空海との境足で消し世界に私だけと寝転ぶ
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あなただけ光速船に詰め込んで十年経てば同い年
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十年差十年しても十年差十光年の彼方の背中
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初体験ずいぶん前に流行ったがアサイーボウルこれ大好きだ!
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四年ぶり まだ恋人はいませんか今日で十八チャンスください
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現在の大好物に飽きぬまま これを最後の晩餐としたい
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昨日までカラッとしていた空気どこ?梅雨の入り口もうすぐそこに
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右肩に聞こえる寝息 左手は誤字がなおらぬ短歌を紡ぐ
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言うことが辛辣なればとうがらし我の理解者娘が名付け
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捌かれて子宮の轢かるうすむらさきの牝馬の亡骸へと車輪
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青年はたは未亡人喪家ゆあらはれて娼館へ入るまでのいきさつ
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靴底ゆ蹄鉄の唱ひびくなる青少年Aへの木馬教育入門
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喫水柩に降る雪柳をとめは蹄鉄を履かせをり 馬に
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町並みがわずかに色を取り戻す もう大丈夫 さようなら君
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夏風邪がずるずるずると咳残し孫来るはずの父の日払う
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花びらが雨に濡れると浮き上がる 傘は未だかと梅雨入りを待つ
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もう一度、今度こそ、これが本番、奇数の花を手折ればいいのに
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なんでかなぁキスうまいやんそれどこで覚えたんかなじっくり聞こか
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物事を理論で語る君からの「何だか好き」は無償で信じる
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ちま猫は おみみのおおきいねこなので ときどき おみみをつままれている
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急ぐ朝 熱いカフェオレもどかしい ねこは猫舌 ねこ母も然り
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忙しいときこそあえてリラックス それがなかなか難しいのね
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異国にて夢と理想を語らつた友はまつすぐ突き進んでく
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四年ぶり同じ皿から取り分けて摘まむひとときさよならコロナ
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ちぎれ雲 晴天の中 ゆらゆらと 我が行く道も 成るに任せて
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ぐんぐんと気温の上がる昼日中ひるひなかしゅるっと細身ほそみ夏雀なつすずめ
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急ぐわけではない普通列車でのんびり出かける
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浮遊する ポプラの綿毛わたげ を受けて 刹那にひかり 存在知らす
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