輪になったビニール紐の向こうから白い終わりが僕を手招く
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踏ん切りがつかないことはルーレットとか神さまに任せていたい
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路地裏に消える獣を見るように皆が忘れる終わりを望む
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長生きの魚が作る物語知らない歌と花を知りたい
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目に見える速度で揺れる水面から魚の温度思い出してる
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この腕をしっとり濡れた梅雨風が家猫みたくやわらかく噛む
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好きなもの黒焦げにして燃やしたら土に還って足場になった
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萎みかけの花ばかり売る夕方に金を貰わず踊る金曜日
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少しでも時間節約何のため「好き」に使おう仕事はあとあと
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早起きし 7時の電車 乗客は 女子高生多く 警鐘が鳴る
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早送り サブスク音楽 消耗品 想いを込めた 歌手はどう思う
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駅名を希望という名に変えただけ 人が溢れる旧絶望駅
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病みかけたfatな妄想持て余し 栞増えてく読みかけのページ
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窓の外遊ぶ子いない昼下がり花もひるねや猛暑がうだる
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朝の庭 蝉の抜け殻 葉の上に しばしの涼風 風の抜け道
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愛犬の為と夫は仕方なく 冷え冷えの部屋で布団にくるまる
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亡母はは言ひし 齢をとらんとわからんよ 解ってきたよ痛みも不安も
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鳥たちは頭寄せ合いついばんで 草刈りの後に残ったご馳走
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色あせしパネル写真にクームス教授と語り合へるは若き我なり
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手首だけのギロチン麻薬のようにして気づけばなくなる喉 声も出ない
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Camera obscura 深き夜の愉しみ 排気音 遠吠え 波の音
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流れてく灯りが疲れた僕をなでる 弛緩する身体、深夜のドライブ
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配られた人生みたいなナッツにも好んで食べる誰かがいること
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ありふれたピーナッツの味。愛されて、変わらないからいつもそばにいる
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魅力ある人にはちゃんと恋人がいるぞ わたしはおとなしく生きろ
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遠距離の彼は彦星隔てるは物理の問題想いは傍に
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疎外感。僕は悪で非力な神。 不快害虫。曰く、「不可解」。
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心臓が ころころ動く 人の目で 込み上げる咳 それでも自分を
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明日から 頑張るぞって 思う時 半ば自分を 諦めて寝る
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自分を 自分と見てくれる 人が好き みんな敵だと すぐ思い込み
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