病室に差し込む夕日が壁に映す点滴袋の水っぽい影
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八分咲き 思い立っての 夜桜は 耐えてくれるや この先の雨
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綺麗だねビリジアン色のその瞳すこしの毒も気づかぬあなた
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ビリジアンにじむ絵の具のさみしさに白を重ねる、罪深いわね
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ふくらむちぢむぼくのはいでわずかにくうきがゆらいでしまったきがした
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おひさまがもうすぐめをつむるとしょかんのまどぎわでことばをあむ
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君は霧。皮膚からぼくを包み込み満たしていくね、そっとおやすみ
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眼の中に棲みつく去年の桜とか君の笑顔がぼくの方舟
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走りだすあなたの汗が春を呼ぶ想い描いた未来が今だ
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最近の君のブームはボタンかけ真剣な顔パパにそっくり
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早々とジャノメの蝶の舞いい出て雪の庭には六花ばかりで
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5回分+6回パッドでもだめだったかと貯水池の規模
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焼酎の炭酸割りが美味かった明日呑むのはお湯割りだけれど
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顔も見ず口もきかずに見送ってずっと苦しいずっとさみしい
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眼を閉じて静かな部屋で聴いている 風の唸りは地球の叫び /強風の日に
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弥生の夏日這って火に入るミミズやら干涸び縮み蟻が運びぬ
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傘を縦に持てぬ人とすれ違う 心の中で雨を降らせる
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春の日に 何もない部屋で 座り込む 床の冷たさ 陽のあたたかさ。
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それ「ひっつみ」南部名物今もなお 「ばっけ」味噌添え燗酒あたたま(山羊さんタラコさん)
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買い物中 メモに書くのを忘れてる食材もの思い出し グッジョブわたし
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古書店のすえた匂いの垂れこめて奇術の本を買い求めたり
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ゆるされる毒の量ならこの愛も白いシーツに滲む頃だろう
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貴婦人が通ったような香りした それもそのはずサクラはバラ科
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月並みと言われようとも桜好き 私の姓の一文字なので
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ねえ聴いて、船をも落とすあたしの声。あなたのことも、沈めたいのよ。/お題「人魚」
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御堂筋並んで歩くこのひとは我がポケットにそっと手を入れ
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キミの声遠ざかってく日々だけど 私は今日も月を見上げる
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ポッカリと 心に空いた 穴埋めに 旅に出かけて 当てもなく彷徨う
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この世には 桃源郷が あるのかな 誰かが言った 山の向こうに
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雨上がりの曇天 点滅する電灯 くすんだポスト
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