「おまえなどいらない」という大木たいぼくのとなりに植える白いアイリス
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やさしさを装った牙の傷跡をもつわたくしもあなたを牙で
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触れ合えば触れ合っただけ泥濘ぬかるみに足をとられる 人がわからぬ
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返信をくれないきみの友愛をあの日のうたの中で待ってる
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あなたからもらったままでかがやいた死ぬまで生きるためのお守り
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友達と 机並べて 高めあう 夕暮れ時は 遥か未来へ
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もうちょっと落ち着いて行動してくれよ 居候するならカサカサ動くな
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子を育て飛び立つまでのつばくらめ人の親子は寄生し過ぎた
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嘘なんて毎度ついたら価値は無い時として出す役に立つ嘘
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「刑務所か!」叫ぶ爺ちゃん制すため退院できる嘘を吹き込む
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明日から 来月からと 後回し 早いに越した ことないけれど
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とてつもない花瓶の闇がこわいので毎日花を挿すのだと言う
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二十年ぶりのあなたがくれるのは今もやさしく空虚なことば
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献杯を終わって ふっと座椅子みる あらいたて・まっとマットで チビ猫しあわせ(すやすや)
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ポロポロと涙が落ちる彼女には 言葉はいらないただ抱きしめる
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冬かとも思う日々から不意の夏「冷やしラーメン」迷わず求む
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お絵描きの 輪に入らぬ子 よく聞けば クレヨンこねる 理由わけあると知る
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陽にあたる君の寝顔を眺めてる今の時刻は午後6時半
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白樫しらかし高木こうぼくもと慎ましく役割り終える皐月さつきの子たち
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ころすのはいつでもできる 今はまだ子どもの為に責任とらす   
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最悪の事態の朝の街角で「冷やし中華が始まったのか」
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寝入りばな 灯の消えた部屋の色 あつめてパッチワークを作る
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ブスなんだ、と空気や態度で気づくときなにかが折れる音が聞こえる
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顔の価値決める権利はきみにない己の価値は己で決める
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5キロ4千円って ご飯1杯53円ぐらい いいんじゃないのそれぐらい
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愕然となる盛り返す気になるもそう簡単に物事行かず
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旅路にて見える稲穂の揺れる波車窓の眺めも遠くの果てに
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初夏の風 秋の風と異なるは 何かが始まる予感を孕む
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人なれて近きにとまる古めじろ一目の間またたきに立つ
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満天の星という名をつけた人 そのとおりです満天星躑躅ドウダンツツジ
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