夏の雨慌てて走り込むヒサシ思い出すのは出会いか別れ
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ミジンコが宙にたくさん舞っていてきれいだ今日も海底都市は
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すれ違いざまにつぶやかれたぼくを導く魔法の言葉「死ね、ゴミ」
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遠ざかる町がどうにも美しくそのとき町は故郷になった
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恋人と呼ぶには低すぎる湿度 それでも僕ら、繋がれている
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名物の茶碗を師から手渡され震える指で茶筅を回す
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お下がりをダサいと言われて馬鹿にされまあいいウチの方針だもの
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あんなにも 待ち望んでた 春の陽気 いざ来てみれば 影に逃げ込む
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持ち札のJOKERどうにか出来ないまま場を支配したつもりのプレイヤー
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ただいまと弾む父の声色は昇進のこと嬉しげな夜
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卯月来る されど何ゆえ 夜寒き 寝間着毛布 未だ冬なり
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もうすぐねおわかれだからあのときのなみだないしょだよもうふさん
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寂しげに机に肘つく横顔は君のいつもの顔と違った
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桜花散るその下歩く二人には哀しい影がまとわりつきて
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四月というマフラーを巻いて走っている 親も子も柴犬まで
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呑むごとに奥から壊れていくような気怠けだる気付きづき「老い」てふイノチ
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花見とか行くのもだるくなってきた代わりに食べる桜餅とか
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一万年あまり続いた縄文時代いまのこの世が仮想現実
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寝室のダブルベッドの ど真ん中 小柄なねこが堂々と寝る(おかあちゃんまってる)
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幼き日怖いと感じたあの歌 今はどこか遠くに行きたい
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春はハム、6メーターの季節なり。アンテナを上げワッチつづけむ
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列島を 縦断しての 桜旅 車窓から見る 大山だいせんの雪
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夕暮れを合図に飛び来る磯鵯ひよどりの囀り聴けば一日ひとひが終わり
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ひかえめに桜並木の隅で咲くソメイヨシノじゃない花も好き/大島桜だった
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俺がしぬ あいつをころして俺もしぬ キミをころして俺もしぬ、どれ? / が死合わせ??
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マッチング 登録だけで見て終わり わかる、やっぱり 君越えれない。/ 虚しいだけ
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蜃気楼上に屹立するバベルの塔を想像する脳髄か
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爛漫らんまんの 主役でらる 足元で 白詰草シロツメクサが 踏まれて悲し
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秋晴の清しい空や靖国の奉納舞は厳かなりき
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「余ってる酒がないか」と尋ねられ手ぶらで行けぬ宵待ちの花見
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