蓼の穂は細く別れた茎先に淡き幸あり秋は満ちゆく
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イヤフォンを分けあって聴く少女らの笑顔のやうに揺れる蓼の穂
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ほんものに出会える人が僅かならわたしは夢を見るだけでいい
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今日という日を生きてただそれなりに為すべきことを少しは為した
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おいマジか ハラスメントの自認なく辞任もなけりゃ留任てのは
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あの船は青い真昼の蜃気楼 地球のうえをめぐるまぼろし
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月が綺麗だといった君の赤ら顔 偶然かしらそれともわざと?
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君という光が私を照らしてる 生き方を導いてくれてる
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ふくれつらしてゐる雲の下に置くけふのことごと手つかずのまま
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さはさはと葉擦れのサ行は襲ひ来るひと葉の時に追ひ立てられて
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秒針のひと刺しそして水滴のひと雫みなしみ入りそむる
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一皮をむいていく狸のような地平線さがす旅にでようか
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まだ夏に沈んでいたい空だけが夕に染まるあなたを残して
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「大人達みんな凄くて憧れで」そう思えた日々 海に還りたい
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「秋来たり」目見えぬ風 配達員 キンモクセイのかぐわしい朝
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「月が綺麗ですね。」「そうね。月は綺麗でしたね。」
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セガ ダイドー ペンタックスにモトグッチ そういうものにわたしはなりたい
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ニューロンの網で言語の蝶捕らえ三十一文字みそひともじの標本に飾る
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ニューロンの網で捕らえるきらめいた蝶を並べる三十一文字みそひともじ
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しましまの しまのしじまのしまながし しまるくびわにしましまのうま
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砂浜に空をゆく影ひらめいて連れ拐われた瞬前の過去きょうのひるごはん
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秋雨のフォークダンスは空を染め緋色の夏を終わらせてゆく
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ユーモアと力強さが同居する歌が好みで近づきたくて
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恋心 頭の中がやまいだれ 掠れるくらいにスマホ摩る
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悲しみの凍るこころを冷凍庫から取り出して自然解凍
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「ここではない、何処か」を重ねるごとにほら、針の筵も広がっている
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バイバイに笑みを満たしたおさなごは別れの仕方こころえている
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薄らの誓いは破れ絶対零度サブゼロの不信は僕を磔にする
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愛されるために各部の体毛を抜けよ生やせよ生やせよ抜けよ
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死ぬことで生きながらえるこの身体 昨日の僕は下水の中に
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