帰る度「あなたはだぁれ」と笑う君 「私は父です」百度目の秋
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新しい朝を迎える繰り返すお天道様はいつも見ている
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積ん読のあはひに本の妖精は月光こぼし文字を指さす
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一冊の時の重さを知らぬまま入りこみたる無風地帯へ
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紙魚しみといふさかなの泳ぐ頁にて水泡みなわの琥珀いろの膨らむ
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たくさんのレビュウがついてこの星は星と呼ぶには小さすぎるか
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輝いておねがいだから頼むから 土下座もするから靴なめるから
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反射するビルの光の重層に薄れる影は街のあやかし
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好きな物 メカとロボとIoTアイオーティー オタクと言われて 構わない
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来し方も行く末もはや酔い果てて彼我は美禄にくずおれてゆく
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酒なくば 即ち死すというごとし あとにもさきにもこの一献よ
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のけものは けものけだもの もだもだの のけてけられてけだものだもの
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どこへ行く どこでもいいさ どこへでも どこへ行ってものけものだもの
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黒い雲 今は真下で向こうには紺碧の空 その真下へと
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共感をされることなき悲しみをふりまわしてるわたしは台風
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暗がりに感じる柔い石鹸を 来世は雨に生まれようかな
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雨音に秒針かさね落ちてゆく宵闇の底のまぼろしの声
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どんぐりを土に埋めつつ冬の夢かぞへてゐるやりすのご一家
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灰いろのりすたち跳ぬる裏庭に灰いろのこころ放り眺めむ
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残酷な平等がある振った君振られた僕を電車は運ぶ
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お陽さまの光のように笑う君 だから私の心も溶ける
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それぞれの種は黄色き芽を伸ばし己が答へを天に示しぬ
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硝子瓶のなかにひしめきあひてゐる黄色きもやしの答へを食はむ
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自惚れと自己撞着の焦げ付きに代えの効かない夢を見ている
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編むことをいついつまでも続けたい それが私の生き甲斐だから
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右手に貝殻 左手にシーグラス 寄せて返すは記憶の波
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一世一代の告解 夏草のざわざわに掻き消されて
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夏めきて 踊り場の密会 駆け抜けるうわさ
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柔らかい機械の鸚鵡に内省を勧められてはまた夜越える
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台風に連れ去られたい、連れ去って。台風一家に入れておくれよ。
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