吊り革のまあるい穴の向こうにも変わらぬ君と揺れしかなくて
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鞄から誰も知らない生き物の脚が出ていた さよなら電車
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拒まれた葉脈の中の猫たちが葉を食い破りやがて眠った
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憑依した酒がゴーストライターの三十一文字みそいちもじが多産多死かな
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涙枯れドアを開けるといるはずの揺れる尻尾とヒコーキ耳が
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弱さとは祈りだけどもきらきらともう大丈夫よ死んでしまった
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遮光して光を亡くしたその部屋でコーヒー豆を挽いた午前五時
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誰もかも生きていますね屋上の青眼の子どもだけでもどうか
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黒点が無数に増える果物が未来を暗示したから 逃げて
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絵を飾る飾る価値すらない人が消えて登場人物になる
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鳥の墜つ地点に黒い穴があり見知らぬ僕が抱きしめた夜
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ささくれた僕の親指からめとりキスで逃げてくきみは純情
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手のひらでしゃりりと鳴った君の頬 色も産毛も桃のそれだね
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りんどうは秋を愛する花だから 風と月光全てこぼさず
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ひたひたと雨の降る日は声だけが響き寂しい海月になりたい
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この心のぞくことができたなら 爽やかな風吹くのだろうか
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そんなにも硝子にも似た冷ややかな秋風が皆みなに迫害されて
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爪先をあなたの色で塗ってみて似合わないのがなぜかうれしい
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流れゆく熱くて緑で白き神 朝、食道に清き御茶漬け。
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残せない 君のメールを 消すときの 張り裂けそうな 俺の心臓
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わかんねぇ俺を例える動物が強いて言うならホモ・サピエンス
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人類が滅びた夜のツイッター botの定型文が流れる
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TLティーエルにbotだけいる真夜中につぶやく言葉は静寂しじまに溶けて
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ライターが栄えて久しいうつし世でマッチを使うあなたが好きです
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東京に最早そんなに価値はないけれどぼくらは残滓を求める
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赤の月、青の煙の、一族の、凍える目から冬が生まれる
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くだらない、無視すればいい……ダメなんだ 愛した過去がまた邪魔をする
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7パーの缶チューハイで誤魔化して なかったことになれよアンタも
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「今日だけは……」そんな日があと何日も続いていくのだこの人生みちのり
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切れ端を摘む代わりに頬張ってあの子の舌が入ってきたの
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