いつのまに 四半世紀を生き延びて ぬいぐるみ干すベランダに夏
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コーヒーは何も入れない方がいい へんな甘さは後を引くから
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届かぬは愛しきひとの後ろ身と風にてゆるる黒髪さえも
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深夜二時 甘い吐息と絡む指 夜は短し時計よとまれ
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夏休み 打ち上げ花火と最終日 甘くてしょっぱい いちごシロップ
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灰色の 濁った光が 部屋にさす きっとみんなが ため息はいてる
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枯れ花に 湿り気一つ 想い馳せ 君は知らぬか もう忘れたか
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歪んでく 体と心が 離れてく ねぇお母さん 僕はここだよ
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空のグラス あるはずだった 未来を飲む のど元過ぎても 冷めぬ熱さは
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重力に 対抗するため 軽くなる 大きく吸った 穴が開いてた
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ひとよりも ひとであること 義務付ける 心でわびる 心はさびる
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所作知らず 所以も知らず 巻き戻し 背中に廃語 響きを置いて
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世の中に「絶対」なんてないけれど「絶対」が欲しい夜はあってつらい
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罪とかも背負ってくれるよ楽天で10万もしたしこのマットレス
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お父さん、お元気ですか フィリピンの女の乳首は何色ですか
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人のため、人のためにと家を出て 梁山泊で饅頭喰らう
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静岡の母と重なりしメスライオン 深夜のナショナルジオグラフィック
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白昼夢を見ていたようだ 真昼間のドトールに漂う死の香りかな
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メイド喫茶のピンクはヤニでくすんでて夢なんて見ない自由があった
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その音はおれが頭のまぼろしか 右腕を刺す秒刻む針
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親友があなたの見つめるその先に。ああわたしってほんとにばかね。
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「本当に削除しますか。」手がとまり。いつまで経っても消せぬ思い出。
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やわらかな指でポストの唇をひらく君恋をしているのだろう
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黒髪と金髪きんがみが手を握り合う看板 後ろに竜の足裏
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貯金なく職もなくしたわたくしは一食一食がただありがたく
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風吹けば揺れる風鈴 見上げれば空より青し入道雲
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転職が始まる証明写真撮るフラッシュはそう未来の光
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先生が俺の女になれと言い 忘れられない繊細な禿げ頭
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触れれば指を切りそうな月に季節の切れ目を見た日は湯を張る
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帰らなくてもいいでしょうと言うあなた 後ろ髪引く ほどけるリボン
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