乾いた色をしている椿冷えきった花弁にゆびをすべらせてゆく
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しじみ蝶のからまりあって昇りゆく 太陽にかさなって見えない
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木の椅子は秋のひかりに温かく降りやまぬ葉の重さをおもう
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冬薔薇の棘の硬さに食い込んだ人差し指に血は出て来ない
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とびとびにとぶ雲を見るあきかぜのはてにはなにもない空もあり
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焦げ茶色の陸橋に汽車あらわれてあとすこしだけ此処にいる 時間
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人びとのあゆむ速さに滲みゆく銀杏並木のあおいろきいろ
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黄昏の稲穂にともる太陽は青いわたしの眼を灼くばかり
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ふざけてる替え歌みたい制服の上に乗っかるオレの顔面
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熱帯夜自販機の前に立っていた君の好みをたしかめている
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ランコムの香水纏う私きみ街で似た香に振り向きますか
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指絡み 永久と尋ねた 笑む君に 今何処かも 聞けず永遠
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懐かしさ 思考は空を 飛びにけり 春の最中に 薫る秋風
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長針に 足踏む短針 願えども 重なる刹那 先行く背中
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土瀝青 昇る苔の香 水底に 雨垂れ泳ぐ 鉄魚の群れ
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一日を無事終えられるありがたさ私はもうすぐ仕事を辞める
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インドカレー屋の兄ちゃんがオメデトとサフランライスに立てる日の丸
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やれやれとため息をつきパスタ茹でアイロンかけて村上春樹
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抱き寄せて同じシャンプーの匂い今甘い香りに包まれ眠る
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午前4時睡眠薬を流し込み眠れぬ夜ただひたすらに朝を待つだけ
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机越し 来ちゃいましたと 言いながら 先輩ちょっとは 困ってください
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この街は 変わらないねと 君の言う、スカートの裾に舞う夜の灯
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あなたなぞに 何もわかりはしませんと 思いながらも 紅を引く朝
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東京をモチーフにした芸術は多く現実の東京ここも劇場
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眠られぬ夜に羊を数えると頭の中に牧場できる
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川柳の一つも詠めずにイキるやつ心の無さにうぁーってなる
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ストロングゼロだけは飲んじゃ駄目だよ と言ってるけどいつも買うのは
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SNSインスタントな関係性別れも言えず切れる哀しさ
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溢れ落つ 伝えず伝う 一雫 露と消えるか 波の随に
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寄る辺無き この身を知った 浅き夢 明日は骸か 灰と変わるか
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