中田満帆    フォロー 0 フォロワー 0 投稿数 16

森忠明に師事。歌集「星蝕詠嘆集」、歌誌「帆(han)」発売中。

ゆうぞらもかえすことばもなかりかな 鳥の一羽を素描したらば 

水匂う両手のなかの海さえも漣打ってやがて涸れゆく 

車すら棺の隠語 カリーナの嫉妬の一語いま燃えさかる 

桜桃の枝葉の匂い 復讐はもどり道など断じていらず 

地下鉄にゆられる少女ためいきがやがて河になり馬になる 

暴力をわれに授けし父老いる 赦さるることなきわれの頭蓋よ 

うばたまの夢が波打つ岸辺にて流木ひとつ持ちて帰らん 

やがてみな遠くなりたり老いたれて植物図鑑に記録されたり 

なみだ花たとえばきみの乳房にて流る汗など愛しくおもう 

装丁家校閲係印刷工作者の悪夢いま売りにでる 

舟に棲む かぜにゆられて語ることすべてに水の匂いが充ちて 

バス停の女生徒ひとりふりかえる鳥の一羽がわれには見えず 

胡葱のような素足でバレイする少女のひとり暗闇に声 

手に触れる温度のようにやわらかくそして悲しい現象学 

わがための墓はあらずや幼な子の両手にあふる桔梗あるのみ 

われのみがひととはぐれて歩きだす初夏の光りの匂いのなかで